2011 Fiscal Year Annual Research Report
バルクナノメタルの特異なトライボロジー特性の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Bulk Nanostructured Metals -New Metallurgy of Novel Structural Materials |
Project/Area Number |
23102511
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Research Institution | Fukui National College of Technology |
Principal Investigator |
加藤 寛敬 福井工業高等専門学校, 機械工学科, 教授 (30311020)
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Keywords | バルクナノメタル / トライボロジー / 摩擦摩耗 / 微細結晶粒組織 / HPT / 凝着力 / 極低炭素鋼 / ボールオンディスク |
Research Abstract |
本研究の目的は、バルクナノメタルの凝着力に着目し、その特異なトライボロジー特性を解明することである。粒界だらけのバルクナノメタルは、結合フリーの原子の割合が多いため、凝着力が強く化学反応性に富むと考えられる。したがって、バルクナノメタルは相手金属との凝着力が大きい(逆に言えば金属接合性に優れる)ために摩擦や摩耗を増大させ、従来の金属とは全く異なる特異なトライボロジー特性を示すと考えられる。 1年目の平成23年度では、凝着力を評価するため、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope、AFM)カンチレバーの原理である板ばね方式を採用し、雰囲気を制御した環境(真空中)で凝着力を測定する実験装置を製作した。従来は微小荷重領域(nN~μNオーダー)で扱っていた凝着力(引き離し力)を、実荷重レベル(mN~Nオーダー)で凝着力を測定できるような構造にし、相手材ボールとの凝着力測定を試みた。さらに、試験片を摩擦させて新生面を形成させた後の引き離し力の測定も行った。また、HPT加工条件を変化させて、種々のサブミクロンオーダーの微細結晶粒をもつ極低炭素鋼ディスク材を作製し、そのトライボロジー特性を評価した。具体的には、雰囲気制御できるボールオンディスク摩擦摩耗試験機を用い、摩擦条件を変化させて種々のボール相手材との摩擦係数・摩耗特性を調査した。摩耗試験後の組織変化や摩擦面性状も観察し、得られたトライボロジー特性を力学特性(硬さ)と関連させて考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HPT加工試験片を用いた摩耗試験によりHPT試験片のねじり回転回数や摩擦条件が摩耗特性に及ぼす影響を明らかにしてバルクナノメタルのトライボロジー特性についての研究成果が得られたため。また、引き離し力による凝着力測定では、データのバラッキが大きいという課題があることが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、バルクナノメタルの特異なトライボロジー特性が、微細結晶粒によるものかHPT加工材特有の組織に起因するものか、あるいはボールオンディスク摩耗試験条件によるものかを明らかにするため、雰囲気(アルゴンガス中、真空中)や摩擦速度・摩擦時間などの摩耗試験条件の影響を調査するとともに、HPT加工後の熱処理により結晶粒サイズを調整した試験片や、他の手法の巨大ひずみ加工プロセス(例えばARB)によるサブミクロン極低炭素鋼の摩耗試験を実施する。
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