2011 Fiscal Year Annual Research Report
新しいラットリング誘起超伝導体の探索
Publicly Offered Research
Project Area | Emergence of Heavy Electrons and Their Ordering |
Project/Area Number |
23102704
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
廣井 善二 東京大学, 物性研究所, 教授 (30192719)
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Keywords | 物性実験 / ラットリング / 超伝導 |
Research Abstract |
ラットリングとは、ある種のカゴ上構造を有する結晶中での非調和巨大振幅振動と考えられているが、その本質の理解は未だ十分とは言えない。また、ラットリングとカゴに存在する伝導電子との相互作用がもたらす超伝導に関しても未解明な部分が多い。これまでの研究において対象となってきた物質は、βパイロクロア酸化物、スクッテルダイト、シリコン・ゲルマニウムクラスレートであるが、ラットリングに特徴的な物性が現れているのはβパイロクロア酸化物に限られている。今後、ラットリングの研究をさらに発展させるためには物質の種類を増やし、系統的な研究を行うことが重要である。 本研究においては、ラットリング物質の新しい候補として、A_xV_2Al_<20>(Al_<10>V)に着目する。この物質は30年以上前に、過剰のA原子として、AlまたはGa原子がカゴ中で局所低エネルギー原子振動をすることが報告され、さらに1.6Kで超伝導になる事が知られているが、局所振動と超伝導の関係は明らかとなっていない。本年度の研究においては、A_xV_2Al_<20>の良質な多結晶試料を合成し、比熱、電気抵抗、磁化などの測定を通して、その基礎バルク物性を明らかにした。 超伝導転移温度は、A元素がGa,Al,Yの順に、1.66K,1.49K,0.69Kであり、Laの場合には0.4K以上で超伝導を示さない。ラットリングの特性エネルギーはこの順に高くなる。よって、超伝導転移温度とラットリングエネルギーには明確な負の相関があることが分かった。ラットリングによって超伝導が増強されていると考えられる。さらに、Gaの量xを系統的に変化させて試料を作製し、xが0.2以上で転移温度が突然約8%上昇することがわかった。この原因はより低いエネルギーを持つGa原子がカゴの中に入ることによるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
A_xV_2Al_<20>の良質な多結晶試料の作製に成功した。当初予定していたのは、A原子がAl,Gaであるが、さらに、Sc,Y,Lu,Laにおいても試料作製ができた。これにより、ラットリングエネルギーの系統的な変化とこれに連動する超伝導転移温度の変化を確認することができた。また、Gaに関しては広い組成範囲において試料合成に成功し、8Kという極めて低エネルギーのラットリングモードを観測した。
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Strategy for Future Research Activity |
A原子を系統的に変えた多結晶試料合成の結果を踏まえて、単結晶試料の育成を試みる。他の研究グループに試料を供給して詳細な物性データを得る。例えば、NMR・NQRによるミクロな測定、高圧下における電気伝導度測定による圧力の効果、中性子非弾性散乱実験による低エネルギー励起の観測などを行う。また、昨年度の研究過程において、LaV_2Al_<20>に発見した巨大な反磁性の起源を明らかにするためにさらなる詳細な実験とバンド計算を行う。
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Research Products
(9 results)