2011 Fiscal Year Annual Research Report
角度分解磁場中比熱測定から切り拓く重い電子系の超伝導
Publicly Offered Research
Project Area | Emergence of Heavy Electrons and Their Ordering |
Project/Area Number |
23102705
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
橘高 俊一郎 東京大学, 物性研究所, 助教 (80579805)
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Keywords | 重い電子系 / 異方的超伝導 / 超伝導ギャップ / ギャップ異方性 / ノード構造 / 比熱測定 / 角度分解磁場中比熱 |
Research Abstract |
本研究課題では、方位を精密制御した磁場中で様々な重い電子系超伝導体の比熱測定を数十mKの極低温まで行い、それぞれの超伝導ギャップにおけるノード構造を決定することを目的としている。平成23年度は、CeIrIn_5、UPt\3、KFe_2As_2、CeRu_2について回転磁場中比熱測定を行い、それぞれの研究結果を国内外の学会や論文で発表した。 特にCeIrIn_5に関しては、C軸を中心に円錐状に回転させた磁場中で比熱の振る舞いがd_<x2-y2>波の超伝導ギャップを仮定した数値計算結果と非常に良く一致することを明らかにし、これまで議論の渦中にあったCeIrIn_5の超伝導対称性を決定づける大きな成果をあげた。CeCoIn_5、CeRhIn_5と並んでCeIrIn_5でもd_<x2-y2>波の対称性が確立されたことは、CeMIn_5系(M=Co,Rh,Ir)の対形成機構が普遍的であることを物語っており、そのメカニズムを理解していく上で重要な手掛かりとなる成果である。本研究成果をまとめた論文は、重要性の高い論文としてPhysical Review B誌のEditors'suggestionに選ばれ、さらにPhysicsのSynopsisにも取り上げられる高い評価を受けた。 本年度は他にも、重い電子系の超伝導を別のアプローチから研究することを目指して、一軸性圧力下で回転磁場中比熱測定が可能な装置の開発にも取り組んだ。本年度は、交流法による比熱測定装置を新たに立ち上げ、比較的断熱条件の悪い環境下でも感度良く比熱を測定することに成功した。来年度は実際に一軸性圧力下での比熱測定を実施していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、CeIrIn_5、UPt_3、KFe_2As_2、CeRu_2と当初の予定より多くの物質において角度分解磁場中比熱測定を行い、超伝導ギャップ構造に関する重要な情報を得た。また、これらの成果は既に学会や論文などで発表しており、当初の計画以上に研究が進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
角度分解磁場中比熱測定装置は24時間自動測定が可能な態勢が整っており、今後も様々な重い電子系超伝導体において研究を進めていく予定である。また並行して、一軸性圧力下比熱測定装置の開発にも力を入れたいと考えている。
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