2011 Fiscal Year Annual Research Report
Yb系重い電子化合物における価数ゆらぎと量子臨界現象
Publicly Offered Research
Project Area | Emergence of Heavy Electrons and Their Ordering |
Project/Area Number |
23102706
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 洋介 東京大学, 物性研究所, 助教 (90422443)
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Keywords | 重い電子 / 量子臨界現象 / 価数揺らぎ / 超伝導 |
Research Abstract |
重い電子系は、量子相転移近傍における新奇な現象を研究するうえで最適な系である。なかでも近年注目を集める、強い価数揺らぎの下での量子臨界現象と超伝導について、典型例の集中的な研究による機構の解明を目的として、Yb系重い電子物質初の超伝導体β-YbAlB_4とその関連物質α-YbAlB_4を対象に研究を行っている。これまでの研究からβ-YbAlB_4における量子臨界現象と超伝導は従来の重い電子系のものとは全く異なり、強い価数揺らぎを伴った状態から現れること、さらに金属では初めて自発的にゼロ磁場で量子臨界性が現れること等が分かってきた。これに対し、α-YbAlB_4のAlサイトを数%のFeで置換することで価数変化を伴う量子相転移および磁気秩序が出現することが分かってきた。 本年度は、Fe置換されたα-YbAlB_4の価数転移と磁気転移の関係性を明らかにすべく、各置換量の試料に対し、磁場中の磁化、比熱、電気伝導度を測定した。その結果、磁気転移は磁場で抑制されるが、その際にβ-YbAlB_4および価数転移近傍の置換量のα-YbAlB_4と同様の非フェルミ液体性が現れないことが分かった。すなわち、これらの系の非フェルミ液体性および量子臨界性に価数が本質的な役割を果たしている可能性が高い。 また、α-YbAlB_4のab面内の電気伝導度はc軸方向のそれに比べ10倍程度大きく、これまで重い電子系で見つかった異方性としては最も大きいと言ってよい非常に大きな異方性を示すことが分かった。これは伝導電子とf電子の混成がab面内方向に強いためと考えられるが、このことはバンド計算やYbサイトの対称性から導かれる結晶場基底状態からも支持され、β-YbAlB_4においても同様の異方的混成が期待される。この異方的混成が、β-YbAlB_4の非従来型の量子臨界性やα-YbAlB_4のメタ磁性にどのような影響を及ぼしているのか興味深い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験計画の遂行の順序については、初年度と次年度で前後する部分があり、また、α-YbAlB_4の異方的混成とメタ磁性に関する研究を優先的に行った等の計画の変更点はあるが、進捗状況としてはおおむね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、α-YbAlB_4のメタ磁性に関する研究を進める。同時に、前年度着手した熱膨張率測定、また、X線吸収による価数の同定を、Fe置換系のα-YbAlB_4に対して行うことで、この系における量子臨界現象と価数揺らぎの関係を明らかにする。また、圧力下精密磁化測定を立ち上げ、β-YbAlB_4におけるチューニングのいらない量子臨界現象から期待される量子臨界相の可能性について検証する。
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