2011 Fiscal Year Annual Research Report
多自由度フォノンと電子相関
Publicly Offered Research
Project Area | Emergence of Heavy Electrons and Their Ordering |
Project/Area Number |
23102707
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
服部 一匡 東京大学, 物性研究所, 助教 (30456199)
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Keywords | 強相関電子系 / 電子格子系 / 近藤効果 |
Research Abstract |
結晶格子のなかに「籠」状の構造を含む充填スクッテルダイトや、クラスレート化合物、およびベータパイロクロア化合物といった物質群は近年その多彩な興味深い低温物性から注目を集めている。平成23年度の研究はその中でも、籠上構造の中心に磁性原子が配置された場合-充填スクッテルダイト等において実現されている-に期待される近藤効果を数値的および解析的手法により明らかにした。 解析した模型は格子振動が混成を媒介する機構を含んだ2チャネルアンダーソン模型である。まず、この模型を取り扱うことが可能な連続時間モンテカルロ法を開発した。その解析から、弱結合領域における非フェルミ液体臨界点において格子振動の波動関数の偶奇性に関する感受率が~-ln Tで発散する事を見いだした。ここでTは温度である。又この手法は、フォノンの自由度を増やした場合も適応可能であり、次年度にはそれらの解析も行いたい。 次に、これらの格子振動-非磁性自由度-がどのような起源で臨界的になるのかを解明するため、境界のある共系場理論の枠組みでこの模型の臨界性を解析した。その結果は、前述の格子振動の偶奇の自由度と局在電子の電荷自由度が組み合わさり、臨界点ではSO(5)対称な自由度として振る舞う事が判明した。この臨界理論は自然な形で強結合領域の磁気2チャネル近藤の物理と繋がる事が示され、この模型の臨界点(線)の振る舞いが完全に記述される事に至った。また、非磁性近藤効果の起源についても、例えばに準位系における2チャネル近藤効果とは全く異なる相互作用から生じ、固定点のスペクトルも全く異なることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定はモンテカルロ法による解析を主に計画を立てていたが、共系場理論による解析がかなり美しい形で行える事がわかったため、そちらに時間をかけるように研究計画を若干変更した。現在1つの論文を投稿中でありまたもう一つの論文も投稿できる直前の状態であり、24年度前半には2つの論文が出版される予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した連続時間モンテカルロ法を多自由度系に適用し、23年度と同様の解析を行う予定である。ここでは、多自由度にすることで新しく生じるエキゾチック近藤効果や関連する物理を明らかにしたい。動的平均場理論を用いて、格子問題を解析する計画であったが、現在のモンテカルロ法では、電子グリーン関数の計算に関して問題があり、その点を克服する必要が生じている。問題が解決しない場合は、数値繰り込み群+動的平均場理論を用いて絶対零度の解析を行う計画である。
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Research Products
(7 results)