2011 Fiscal Year Annual Research Report
プラセオジウム化合物における多極子、フォノン、核スピンによる複合量子状態の研究
Publicly Offered Research
Project Area | Emergence of Heavy Electrons and Their Ordering |
Project/Area Number |
23102710
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
椎名 亮輔 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (30326011)
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Keywords | 希土類化合物 / f電子系 / 結晶場 / 多極子 / 核スピン / X線散乱 / 混成 / フォノン |
Research Abstract |
URu2Si2の隠れた秩序状態の問題に関して、近年国内外で、高次多極子モーメントを主要秩序変数とするいくつかのモデルが提案されてきた。当年度は、実験グループとの協力関係のもと、これらの高次多極子モデルの解析を進めてきた。具体的には、Oxy型四極子、Oyz+Ozx型四極子、Hxy型八極子それぞれの整列状態に対する中性子散乱、X線散乱の形状因子の計算を行い、各モデルの可否に関する実験的な判定に十分な異方性が存在することを示した。この解析に基づき、2011年12月にスプリング8で放射光によるX線実験が実施されたが、残念ながら狙っていた超格子反射の観測には至らなかった。今後、継続課題として、理論実験両面で、問題点の洗い直しを行っていく必要がある。 スクッテルダイト化合物PrRu4P12に関して、結晶場3重項における磁気モーメントとPrイオンの核スピンによる束縛状態の形成が、1K以下の低温領域の熱力学量に見られる様々な異常の原因であることを示して来た。当年度は、この系の低温領域での核スピン効果を含めた輸送特性の定量解析を進め、論文として纏めた。また、これまでの超微細相互作用のみに基づく解析では、比熱のピーク位置や磁場異方性など、実験との一致が十分ではないことが分かっているので、有意な補正として3重項とフォノンとの相互作用による動的ヤン・テラー効果の解析を現在進めている。 スクッテルダイトの秩序状態の多様性に関して、良く知られているpバンドとともに、遷移金属イオンによるdバンドを考慮し、df間の有効多極子相互作用を導いた。それによれば、f状態が1重項基底の場合は四極子相互作用が、3重項基底の場合は磁気相互作用が主要となることが分かった。これらにより、PrOs4Sb12における四極子効果や、PrFe4As12などの複雑な磁性を統一的に説明することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PrRu4P12において核スピンが、f電子との相互作用を通じて電気抵抗への顕著な寄与を与えうることを示すことが出来た。3重項とフォノンの相互作用の解析も順調に進めている。ウラン化合物の隠れた秩序問題に関しては、未だ答えには到達できていないものの、当年度の理論実験の共同研究により可能性を大分絞り込めたと思う。また、f多重項における近藤効果の数値計算を行うための準備を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ウラン化合物について、ごく最近、磁気的な32極子の可能性が指摘され、様々な実験と整合することから注目されている。このモデルの検証実験としては、短波長の中性子散乱が可能なので、今後、中性子形状因子の計算を行い、実験を実施する予定である。また、非クラマース2重項が結晶場基底の場合の近藤効果とフォノンの寄与については継続課題として数値計算の準備を進めて行く。
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