2011 Fiscal Year Annual Research Report
局所相関の強い遍歴電子系における新しい量子臨界現象の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Emergence of Heavy Electrons and Their Ordering |
Project/Area Number |
23102716
|
Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
渡辺 真仁 九州工業大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (40334346)
|
Keywords | 物性理論 / 強相関電子系 / 重い電子系 / 量子臨界現象 / 低温物性 / 電荷移動 / 局所相関 / 量子輸送現象 |
Research Abstract |
重い電子系物質YbRh2Si2の常磁性金属相において、低温で一様帯磁率や電子比熱係数、電気抵抗率が従来のスピンゆらぎの量子臨界現象の枠組みに従わない、非従来型の量子臨界現象を示すことが観測され、大きな問題となっている。最近、β-YbA1B4でも同様の臨界現象が観測され、Ybの価数が+2.75という中間価数をとることが明らかとなり、Ybの価数のゆらぎが非従来型の量子臨界現象に果たす役割に関心が高まっている。そこで、Yb系重い電子系物質を記述する基礎的模型である、周期アンダーソン模型に基づいて、Ybの価数ゆらぎの量子臨界現象の理論を構築した。f電子の強い局所相関の効果を取り入れた結果、価数ゆらぎのモードが局所的な振る舞いを示すことを見出し、それが一様帯磁率と電子比熱係数、電気抵抗率における非従来型の量子臨界現象を引き起こしていることを示した。本研究課題では、この研究をさらに発展させ、非従来型の量子臨界現象の統一的な理解を行うことを目的とする。すなわち、局所相関の強い遍歴電子系における新しい量子臨界現象を解明することが研究の目的である。本年度は、周期アンダーソン模型に基づいて、YbやCeの価数転移と磁気転移の関係について理論的に解析を行った。その結果、f電子と伝導電子の混成強度が大きい場合には、両者は圧力や磁場を制御パラメータとした相図上で離れているが、混成強度を小さくするにつれて両者が接近することがわかった。現実の重い電子系化合物で実現していると考えられる比較的小さい混成強度の場合には、両者は非常に近接する(或いは一致する)ことがわかった。この結果は、実験と理論の比較を行う際に重要であり、これまで考慮されてこなかった、電荷の自由度に関する価数転移の量子臨界点が、磁気臨界点に影響を及ぼしていることが明らかとなり、重い電子系の研究において重要な意義をもつと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初想定していた物質YbRh2Si2やbeta-YbA1B4以外の物質である、alpha-YbA1B4やYbX2Zn20(X=Ir,Co,Rh)などの物質において、本研究が理論的に予想していた新しい量子臨界現象が出現することが実験により明らかとなってきた。当初の想定以上に本研究の理論的予想がより広い物質にあてはまる可能性が高まったので、今後も引き続き本理論研究を推進しつつ、実験との比較検討がより多くの物質で可能となると考えられるため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き理論の拡張・整備を行う。また、本研究課題の理論に対応する可能性のある物質について、実験研究者と協力しながら対応する実験を遂行してもらい、結果を比較検討していくことが今後の重要な研究の推進方策である。
|