2011 Fiscal Year Annual Research Report
ラットリング超伝導体βパイロクロア酸化物の電子状態研究
Publicly Offered Research
Project Area | Emergence of Heavy Electrons and Their Ordering |
Project/Area Number |
23102725
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
寺嶋 太一 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導物性ユニット, 主席研究員 (40343834)
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Keywords | パイロクロア / ラットリング / フェルミ面 / dHvA / 超伝導 |
Research Abstract |
βパイロクロア酸化物超伝導体AOs206(A=K,Rb,Csに対しTc=9.6,6.3,3.3K)においては、OsO6の作るかごの中のアルカリ原子のラットリングが超伝導クーパー対を作る引力の起源と,なっていることが、物性研廣井らのこれまでの系統的な研究から明らかになっている。殊に、KOs206では、電子比熱係数から見積もられる多体効果による質量増強因子λが約6と極めて大きく、超伝導転移に伴う比熱の大きな飛びなどから極めて強結合の超伝導が実現していることが明らかになっており、その電子状態は大変興味深い。我々は、最近KOs206のdHvA振動の測定に成功した。測定には水冷銅磁石と希釈冷凍機を使用し、最高磁場35T最低温度30mKまでトルク法で測定した。観測されたフェルミ面とバンド計算との一致は良く、フェルミ面は完全に決定された。多体効果による質量増強はλ=5--8であり、電子格子相互作用によるものとしては異常に大きい。最大で自由電子質量の26倍の重い有効質量が観測されており、これは、f電子系以外ではまれに見る重い電子である。さらに、LuNi2B2CやMgB2など比較的高いTcを持つ電子格子相互作用起源の超伝導体の場合、特定のフォノンと特定の電子状態との間にだけ特に強い相互作用があって高いTcが実現しているが、それらと比較した場合に、KOs206では質量増強の強さがフェルミ面の各部位や方位によらずほぼ一様であるという顕著な特徴があることが明らかになった。これはこの系における電子ラットリング相互作用の特性を示すものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では、常圧下でのフェルミ面の決定と、圧力変化の測定の2本立てであるが、予定期間の半分を終わって、上述のようにKOs206のフェルミ面が完全に決定されているので、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、dHvA振動が未測定のRbOs206に注力し、常圧でのフェルミ面の完全決定と、圧力変化の測定を実施したい。
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