2011 Fiscal Year Annual Research Report
グラフェンでできた超伝導/強磁性/超伝導接合における磁性と超伝導の競合
Publicly Offered Research
Project Area | Topological Quantum Phenomena in Condensed Matter with Broken Symmetries |
Project/Area Number |
23103503
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
神田 晶申 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30281637)
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Keywords | グラフェン / ジョセフソン接合 / SFS接合 / π接合 / バリスティック伝導 / 電界効果 / キャリア密度ピニング |
Research Abstract |
本研究は、新奇2次元物質グラフェンでできた超伝導/強磁性/超伝導接合におけるジョセフソン効果の観測を通して、理論予測されているディラック電子系に特有な磁性と超伝導の競合、π接合の形成等の現象を実験的に検証することを目的としている。そのためには、グラフェン中を電子が無散乱(バリスティック)に伝導すること、ゲート電圧を掃引することによって接合近傍のグラフェンのフェルミ準位がディラック点を横切ることが必要不可欠である。 我々は、バリスティック伝導の実現が可能な極めて短いジョセフソン接合をななめ蒸着法によって形成する方法を開発した。その方法で作製した長さが50nmのAl/グラフェン/Alのジョセフソン接合と従来のリフトオフ法で作製した長さ220nmの接合のゲート電界効果を比較した。その結果、(1)常伝導状態では、前者では後者に比べてゲート電圧による抵抗の変調が大幅に小さくなること、(2)超伝導状態では、前者では超伝導電流のゲート電圧による変調が全く見られないこと、が明らかになった。 この主要な原因として、グラフェン/電極界面では、仕事関数差によってグラフェンに電荷が注入され、界面近傍のキャリア密度が固定化されるためであると考えた(キャリア密度ピニング)。このことを立証するために、1枚のグラフェン内に長さの異なる多数の接合を形成し、電界効果を比較した。その結果、接合長さが1ミクロン以下では電気伝導度のゲート電圧依存が顕著に弱まることが分かった。すなわち、電極から0.5ミクロン程度の範囲でキャリア密度が固定化されていることが立証された。 本研究の目的を実現するためには、このキャリア密度ピニングを軽減することが必要である。また、これまでグラフェンジョセフソン接合に特有な相対論的ジョセフソン効果が観測されなかった原因の一つが、キャリア密度ピニングであることも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
バリスティック伝導が実現する短い接合において、研究計画段階では想定していなかったゲート電界効果の弱まりが観測された。実験計画の遂行には、その主要原因であるキャリア密度ピニングを軽減することが不可欠であるので、まず、キャリア密度ピニングに関する実験を行う必要があった。その結果、計画の遂行が遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、キャリア密度ピニングを軽減する方策を開発する。現時点では、接合界面に酸化膜などの分子膜を挟み込むことを考えている。ゲート電界効果の接合長さ依存性からピニングの強弱を評価する。キャリア密度ピニングの軽減が確認されたのち、その材料系を用いてジョセフソン効果に関する実験を行う。
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