2011 Fiscal Year Annual Research Report
微小磁場中スピノルボーズ凝縮体を用いた新奇量子渦の実現
Publicly Offered Research
Project Area | Topological Quantum Phenomena in Condensed Matter with Broken Symmetries |
Project/Area Number |
23103514
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
東條 賢 学習院大学, 理学部, 助教 (30433709)
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Keywords | 原子 / 低温物性 / 物性実験 / レーザー冷却 |
Research Abstract |
スピノルボーズ凝縮の実験では、まず1成分ボーズ凝縮を磁気トラップで生成した後に光トラップへ移行させ、その後ラジオ波を用いて内部状態を操作することで多成分を用意し、その後微小磁場化することでスピノル状態を実現する。磁気トラップから光トラップへの導入時に、お互いのトラップの空間配置のずれによって原子数が不安定になっていた。本年度はその原因を特定するために、環境の磁場測定、光トラップ強度測定、環境温度測定を行った。その結果として実験室環境温度と磁場の間に相関があり、その変化に応じてボーズ凝縮体の原子数や純粋成分の凝縮体比率が変化することを見出した。温度安定化により磁場安定度が向上し、磁気トラップから光トラップ移行時の原子数安定度がこれまでの20%程度から10%以下まで向上することができた。光トラップへの移行安定度向上に伴い、スピノル状態での多成分凝縮体間の原子数比安定化を実現できた。 原子数安定化によって安定になった光トラップ中1成分凝縮体に対し、まず引力ポテンシャル(波長1064nm)を用いた光スプーンの導入を行った。光スプーンは2軸の音響光学素子と3台の2チャンネル周波数発生器を用いて擬似的に2本のビームを実現し、凝縮体近傍で空間的に回転する。CCDカメラで凝縮体近傍での光スプーンの空間制御を確認し微調整方法を確立させた。実験では光トラップ中ボーズ凝縮体を用意してから光スプーンを作用させ、回転周波数を変化させて凝縮体の密度分布の変化を観測した。回転周波数がトラップ周波数の70%から90%程度のとき、ボーズ凝縮体中心位置に円状の低密度領域が現れ、周波数依存性からこれが量子渦であることを確認できた。ボーズ凝縮体生成後に回転によって量子渦の生成に初めて実現できた。特にトラップ周波数近傍では複数の量子渦が現れ、エネルギー的に安定な状態へ再配置化する傾向も観測できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
他の先行実験ではボーズ凝縮体生成前から光スプーンを導入していたため、多成分凝縮体であるスピノル状態での実験は実現できなかったが、本研究ではボーズ凝縮体を生成した後に光スプーンを導入した初めての量子渦生成実験に成功した。この結果は多成分凝縮体での実験が可能になり、スピノルボーズ凝縮体を用いた本研究の実現可能性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年4月から旧所属の学習院大学から新所属の中央大学へ異動した。旧所属からは装置を持ち出すことができなかったため、新所属で新たにボーズ凝縮実験装置を組み上げなければならない。ボーズ凝縮装置は一般的な製作予算は新学術公募の4倍、期間は3年程度必要とされるため本期間での実現は難しいが、実現可能なレーザー冷却装置の製作と当初の研究計画に関連した磁場制御の基礎実験を行う。近隣を走る電車などによる環境磁場の影響を打ち消すために高感度な原子の磁場応答を利用し、原子を磁気プローブとした磁場フィードバックを実現する。これまで実現が困難だった1ミリガウス以下の環境の達成とスピノル凝縮体への応用可能性の評価を目指す。
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