2011 Fiscal Year Annual Research Report
ファン・デル・ワールス密度汎関数の開発と応用
Publicly Offered Research
Project Area | Materials Design through Computics: Complex Correlation and Non-equilibrium Dynamics |
Project/Area Number |
23104501
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
濱田 幾太郎 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助教 (80419465)
|
Keywords | ファン・デル・ワールス力 / 密度汎関数理論 |
Research Abstract |
今日、局所密度近似(LDA)あるいは一般化密度勾配近似(GGA)を用いた密度汎関数理論(DFT)に基づく電子状態計算手法が、原子・分子や固体、さらには表面や界面の理論的研究手法として幅広く用いられている。しかしながらLDAやGGAはファン・デル・ワールス(vdW)力を正確に記述できないことがよく知られている。量子化学の分野ではMP2法やCoupled-cluster法などの高精度計算手法が確立されており、それらの手法を用いることで分子間のvdW力を正確に記述することが可能である。しかしながらその計算コストは極めて高く、凝集系の計算には適していない。 本研究課題では、経験的パラメータを用いることなく共有結合とvdW力をシームレスに記述することが可能な、vdW密度汎関数(vdW-DF)の高精度化と適用計算を行った。これまでの研究でCooperによる交換エネルギー汎関数(C09)とLeeらによるvdW-FD2の非局所相関を用いたvdW-DF(vdW-DF2-C09)が、吸着系や層状物質を精度良く記述できることが分かっている。平成23年度はvdW-DF2-C09の適用計算を中心に研究を進めた。 金(111)表面上に吸着した中性および負に帯電したフラーレンにvdW-DF2-C09を適用した。vdW-DF2-C09はフラーレンの吸着を精度良く記述できること、フラーレンの吸着にはvdW力が不可欠であることが分かった。また表面において帯電したフラーレンを計算する手法を提案し、フラーレンは負に帯電するとパウリ反発により金属表面から離れるという結果が得られた。この結果は鏡像電荷による引力的相互作用により分子が金属表面に近づくという直感的な描像と相反する結果であり、フラーレンの吸着状態における軌道混成の重要性が明らかとなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
vdW-DFの精度を向上する目的はvdW-DF2-C09によりほぼ達成できている。自己無撞着なvdW-DF(SC vdW-DF)のSTATEへの実装は若干遅れているが、SC vdW-DFは既に多くの計算プログラムに実装されているため、自己無撞着性の検証等に問題はない。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後もこれまでの研究を推進し、応用計算を数多く行い、vdW-DF2-C09の精度とその適用限界を明らかにする。またSC vdW-DFのSTATEコードへの実装も着実に進める。
|