2011 Fiscal Year Annual Research Report
分割統治法に基づく大規模電子状態計算法の確立と分子動力学法への応用
Publicly Offered Research
Project Area | Materials Design through Computics: Complex Correlation and Non-equilibrium Dynamics |
Project/Area Number |
23104512
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
下條 冬樹 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (60253027)
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Keywords | 計算物理 / シミュレーション / 並列計算 / 分子動力学法 / 電子状態計算 / オーダーN法 / 分割統治法 |
Research Abstract |
本研究で採用する分割統治法では、全系をドメイン(小部分)に分割し、各ドメインに対して隣接するドメインとは独立に電子状態を計算する。ドメイン内では正しく波動関数が得られるように、各ドメインの周りにはバッファー領域を設定して電子状態計算を行う。当初、実空間分割による並列計算コードを開発するために電子状態計算に有限差分法を採用することを決め開発を進めてきた。しかし、各ドメインに対する電子状態計算の規模は比較的小規模であるため、この部分の計算における実空間分割のメリットはあまりない。従って、波動関数の基底として実空間メッシュや局在基底を用いる必然性はないことになる。そこで、今年度は、高速計算を実現すると共に、有限差分法では困難であったエネルギーの収束性や原子に働く力の評価法を改善するために、従来の電子状態計算法で実績のある平面波基底に基づくコードの開発を行った。更に、非平衡ダイナミクスを扱う理論手法と本研究で提案するオーダーN電子状態計算法を結合することにより、大規模系の非平衡過程の研究を目指している。今年度までに、光捕集性デンドリマー等の光機能性物質やZnO/ポリマー系等のハイブリッド太陽電池におけるエネルギー伝達機構を調べた。これらの計算では、電子状態の遷移を考慮して分子動力学法に非断熱過程を取り入れるために、TullyによるFSSH法を採用した。FSSH法の方法論的な問題の検討や励起状態の正確な取り扱いの必要性を認識しつつ、多数の原子を扱うために励起状態を線形応答理論の範囲で扱った。大胆な簡単化にも拘わらず光アンテナ部位で光励起された励起子がコア部位へ移動する様子やZnO/ポリマーにおける電子とホールの移動を再現することに成功し、エネルギー伝達に要する時間を見積もることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平面波基底に基づくコードの開発をほぼ終えており、応用研究へ向けた準備研究も順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の通り研究を推進する。 ・平面波基底に基づくコードの高速化を行う。 ・より安定に計算を行うためのパラメータの探索を行う。 ・大規模系の非平衡ダイナミクスのためのプログラム開発を行い、励起子の移動過程を調べる。
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Research Products
(22 results)