2011 Fiscal Year Annual Research Report
酸化物磁性体のテラヘルツ・マグノン生成とその空間伝播観測
Publicly Offered Research
Project Area | Optical science of dynamically correlated electrons in semiconductors |
Project/Area Number |
23104706
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 琢哉 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (40451885)
|
Keywords | テラヘルツ / マグノン工学 / 酸化物磁性体 / 超短パルスレーザー / 空間伝播 |
Research Abstract |
これまで磁性体の高周波特性はマイクロ波帯(~10GHz)でさかんに研究が進められてきた。一方,反強磁性モードのマグノン周波数は,強磁性体よりも桁違いに高くTHzオーダーに達することから,高周波デバイスへの応用が期待されるが,これまではあまり研究が進んでいなかった。本研究では,フェムト秒光パルスやテラヘルツ電磁波をガーネットやオルソフェライトといった酸化物磁性体に照射することでコヒーレントマグノンを生成すること,またこれを磁気信号として利用するために,マグノンの空間伝播を実時間で直接イメージングすることを目的とする。 今年度は、反強磁性体の中でも最も高いマグノン周波数を有するCoOを用いて測定を行った。これまで報告例の少なかった直線偏光パルスによる励起を中心に非熱的にマグノンを発生させ4.4THz,6.6THz,8.9THzという極めて高いマグノン周波数の観測に成功した。これらのマグノンは発生効率が偏光面の角度に大きく依存するので選択的に振動モードを励起することができた。 また一方、新しいスピン波誘起の手法として、逆ファラデー効果を用いたスピン制御に注目した。この手法によって誘起されるスピン波モードを特定するために、円偏光パルス照射場所から二次元的に伝播するスピン波の位相を時間空間分解測定した。実験結果は、静磁波の分散関係を用いた数値計算によってよく再現することができ、誘起されるスピン波の波数分布が光パルスのスポット形状で決まることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の今年度の研究目的は達成され、さらに直線偏光でのスピン制御、ポンプ光スポット形状によるスピン波制御などの想定以上の知見を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
マグノン周波数がGHz帯であるガーネットと異なり、THz帯に達する反強磁性体のマグノンの空間伝播長は1μm以下になると予想され、検出が困難であることがわかった。そこで若干の方針転換をして、試料をガーネットに限り、マグノン伝播方向のより任意な制御を目指す。
|