2011 Fiscal Year Annual Research Report
サイクロトロン共鳴法を用いた光キャリアダイナミクスの研究
Publicly Offered Research
Project Area | Optical science of dynamically correlated electrons in semiconductors |
Project/Area Number |
23104720
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Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
秋元 郁子 和歌山大学, システム工学部, 准教授 (00314055)
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Keywords | 電子・電気材料 / 光物性 |
Research Abstract |
本研究は、電子スピン共鳴装置を用いた時間分解サイクロトロン共鳴(Cyclotron Resonance,CR)法により、光キャリアの有効質量決定とキャリアダイナミクスの観測を行い、半導体材料において光キャリアが関連する光物性を明らかにすることを目的としている。 H23年度は、まず、ナノ秒パルス光励起下での時間分解CR法をCu_2O結晶に適用し、CR信号の励起波長依存性、励起強度依存性、温度依存性を丹念に調べた。その結果、Cu_2O結晶での光キャリアは励起子のAuger解離過程で生成すること、光キャリア密度が高いとプラズマ遮蔽によりCR共鳴が低磁場シフトすること、さらに、高密度ではマグネトプラズマ共鳴することを見出した。共振器内での任意の方向に面した試料位置での光強度を実測することで、試料表面での励起強度を見積もり、試料正面(側面)での励起密度19(4.7)x10^<16>cm^<-3>に対し、80ns後の励起子密度は3.9x10^<15>cm^<-3>と見積もられ、Auger定数が4(1)x10^<-17>cm^3/nsと見積もられた。また、CR共鳴の磁場に対する結晶試料方位依存性からバンド質量の僅かな異方性を捕らえようとしたが、実験精度内では有意な差異は見出されなかった。 一方、酸化物SrTiO_3結晶・TiO_2結晶で、強励起下で発生する青色発光に関与する光キャリアの時間分解CR測定を試みたが、励起紫外パルス光の強度が閾値に足らず、CR信号の取得には至らなかった。さらに、正孔移動度が高いことで知られるルブレン分子生結晶でのバンド伝導を捕らえられるかについても、ルブレン単結晶を作製して、本CR法で確かめたが、有意な信号はまだ得られていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部、まだCR信号が得られていない系があるものの、亜酸化銅Cu_2O結晶での時間分解CR測定は順調に実施でき、時間分解CR法のデータの解析法を確立し、キャリア数について定量的な見積もりができるように研究が進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、SrTiO_3結晶やTiO_2ルチル結晶において近年見出されている青色発光のダイナミクスと、光キャリアのダイナミクスを直接的に関連づけることも目的としている。現状では、励起強度が光キャリア生成の閾値に足りていない可能性があるので、今年度は新たに超小型プリズムを仕込み、窓から90度配置での励起強度を確実に高くしてCR信号の取得に努める。 また、近年電子デバイス材料として注目されている間接遷移型半導体のダイヤモンドでもCR信号が得られるか試みる。
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