2011 Fiscal Year Annual Research Report
高Q値シリコンフォトニック結晶ナノ共振器における誘導ラマン散乱の増強
Publicly Offered Research
Project Area | Optical science of dynamically correlated electrons in semiconductors |
Project/Area Number |
23104721
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
高橋 和 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (20512809)
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Keywords | フォトニック結晶 / 微小共振器 / 応用光学・量子光工学 / 半導体物性 / 光源技術 / ラマン散乱 / 非線形光学 / シリコン |
Research Abstract |
申請者は、高Q値・微小体積を併せ持つ2次元フォトニック結晶ナノ共振器のQ値向上において、最もポピュラーな物質であるシリコンを用いて世界最高値を更新しつづけ、同時に、非線形光学効果の増強作用の解明を重視してきた。これは、非線形光学現象が有用かつ多彩である一方、効率が低くデバイス小型化が困難だからである。 本課題では、非線形効果の一種である誘導ラマン散乱の増強を、共振器のQ値/波長/電磁界分布/対称性、競合する非線形効果まで考慮して、体系的に調べ局ことを主目的としてきた。誘導ラマン散乱を選択した理由は低ノイズ光増幅を可能とする実用上魅力的な現象であり、特に単結晶シリコンは高いポテンシャルを持つと近年注目を集めている。 本年度の主な成果の1つは、ナノ共振器による誘導ラマン散乱の増強効果を発現させるために必須であった共振器内の2つの共振モードの周波数差をSiのラマンシフトである15.6THzに共鳴させる共振器構造および周波数差の微調方法を確立したことである。これはフォトニック構造をサブnm精度で制御する卓越したプロセスを開発することで可能となった。2つ目の成果は、誘導ラマン散乱を測定するための顕微光学系を構築して、実際にラマン散乱の増強および誘導ラマン散乱の兆候を確認したことである。これらの成果は、前身の公募研究から継続して行ってきた研究が実を結んだものであり、学生自身がアメリカの国際会議で発表した。残念ながら、予定していたポンププローブ測定による光利得の直接観測は次年度に回すこととなったが、計画を前倒しして進めた誘導ラマン散乱の増強に関する理論構築に着実な進歩が見られ、実際にその理論の実証にも成功しつつある。そのため当初予定していた主目的の多くを次年度に達成する見通しが立った。 なお、本研究の試料作製の一部は、京都大学野田進研究室の協力を得て行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実際に作製した高Qナノ共振器において、世界で初めてラマン散乱光の観測に成功するとともに、ナノ共振器における誘導ラマン散乱増強に向けた試料構造や必要な励起強度などが理論検討を通して明らかとなり、研究課題の主目的を達成する見通しが立ったため。不満な点を挙げるとすれば、論文執筆が遅れている点であるが、これは震災の影響と昨今の学生の就職活動の長期化が主因である。
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Strategy for Future Research Activity |
共振器のQ値/波長/電磁界分布/対称性、競合する非線形効果まで考慮した琿論検討と作製・実験を通して、体系的に誘導ラマン散乱増強に最適な共振器構造を見出す。同時に顕微ラマン測定系にパルス励起光路を追加して、ポンププローブの2波長対応に改良して誘導ラマン散乱による光利得の観測を行う。研究遂行上の問題点は今のところ見られない。強いて言えば教育機関として最も重要な責務である人材育成を行いたくても教育を施すべき学生が当研究室にいないことであるが、これは日本の高等教育が抱える病的問題である。この点を補うために、他機関の研究者と相互協力して研究を進める。
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