2011 Fiscal Year Annual Research Report
高密度電子励起によるサブピコ秒相変化現象に基づくアクティブナノフォトニクス
Publicly Offered Research
Project Area | Optical science of dynamically correlated electrons in semiconductors |
Project/Area Number |
23104722
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
斎木 敏治 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70261196)
|
Keywords | 相変化材料 / フェムト秒レーザ / 光学異方性 / アモルファス |
Research Abstract |
GeSbTeに対して、超短パルスを用いた瞬間的な高密度電子励起によって長く弱い結合を切断すると、サブピコ秒で非熱的にアモルファス化が可能である。その際、直線偏光をもつパルス光を用いると、電子励起によって特定の方向の結合を選択的に切断でき、結果として構造に異方性を有するアモルファス状態を形成できると期待され、本研究では、その実証を試みた。 ガラス基板上にGe_2S_b2Te_5(厚さ20nm)をスパッタ成膜し、さらにアニーリングによって結晶化したものを試料として使用した。チタンサファイアレーザからのフェムト秒パルス(波長800nm)を試料に照射し、アモルファス化(マーク記録)をおこなった。マークからの反射光の偏光回転量をバランス検出によって観察したところ、系統的なコントラストの変化を確認した。観察光の偏光方向がフェムト秒パルスと平行な場合はコントラストが弱く、±45°あたりで最大、かつ逆コントラストとなった。偏光回転角の最大値は1.5°程度であった。これらの結果は、相変化光ディスクに偏光情報の書き込みも可能であることを意味し、多値化記録の可能性を示唆している。 アモルファス化過程のモデルの1つであるKolobovモデルでは、x、y、z方向に伸びる3つの弱い結合が切れ、アモルファス状態へと変化すると考える。この場合、フェムト秒パルスの偏光方向をもつ結合に対して選択的な電子励起が生じ、アモルファス化の契機となるが、最終的にはx、y、zの3方向の結合がすべて切断されるため、基本的には異方性の発現は期待できない。最近提唱されたRobertsonらのモデルでは、Geが[111]面内で移動すると解釈している。このモデルに基づけば、フェムト秒パルスの偏光方向の結合が必ず切断され、残りの2方向のいずれかは結合を保つので、異方性が生じる可能性が十分にある。
|
Current Status of Research Progress |
Reason
高密度電子励起による非熱的、サブピコ秒・ナノスケール相変化により、光学異方性の発現とその消去について、アクティブにスイッチングすることに成功している。
|
Strategy for Future Research Activity |
金ナノ粒子との組み合わせにより、さらに高コントラストな偏光特性を発現させる。また、電子顕微鏡観察により、異方性の起源の解明を目指す。
|