Research Abstract |
今年度は,Ti-N錯体と炭素-金属結合とのトランスメタル化の過程を詳細に調べるため,主に10族のPd触媒やNi触媒を用い検討を行った.その結果,Ni触媒を用いると芳香族クロリドとTi-N錯体とのトランスメタル化が容易に進行し,対応するアニリン誘導体が得られることを見出した.Ni触媒を用いた芳香族クロリドのアミノ化反応が,すでにBuckwaldらにより報告されているが,彼らの報告では窒素源としてアミン化合物を用いておりまたトランスメタル化を経由する反応ではなく,反応機構が異なる.従って,本結果はTi-N錯体を窒素源として用いた芳香族クロリドのアミノ化の初めての例である.また,分子内の適切な位置にヘテロ原子などのキレート可能な官能基を持つ芳香族化合物の炭素-水素結合はPd触媒によって容易に活性化を受け,他の官能基へと変換できることが最近報告されている.これらの反応例ではアミノ化反応も報告されているが,窒素ガスから調製される金属-N錯体を窒素源とした反応は全く報告されていない.そこで,2-phenylpyridineと2価Pd触媒から炭素-水素結合の活性化を経て容易に調製できるPd錯体と窒素ガスから調製したTi-N錯体の量論反応を検討した,本反応においてはキレート部位として作用しているピリジニル部位の嵩高さのためか,Pd錯体の反応性が乏しく,未だに効率よく炭素-Pd結合を炭素-窒素結合へ変換する条件を見出すには至っていないが,ごく最近の検討によって,1)配位子としてdppfなどの2座配位子が適している,2)出発錯体は塩化パラジウムよりも酢酸パラジウムの方がトランスメタル化が進行しやすい,ことなどを見出すことができている.今後は,更にこのトランスメタル化の過程を検討するとともに,炭素-水素結合の活性化を伴いつつ,直接的に炭素-窒素結合へと変換する反応系へと展開して行く予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
上述のとおり,本年度はTi-N錯体と炭素-金属結合とのトランスメタル化の過程を詳細に検討したので,今後は一連の反応,すなわち炭素-水素結合の活性化を伴いつつ,直接的に炭素-窒素結合へと変換する反応の検討を行っていく予定である.
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