2011 Fiscal Year Annual Research Report
金属触媒による不活性結合開裂に関する理論的研究
Publicly Offered Research
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
23105507
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
森 聖治 茨城大学, 理学部, 准教授 (50332549)
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Keywords | 分子軌道法 / 金属触媒 / 不活性結合 / 反応機構 / 量子化学計算 / ヘム酵素 / 分子動力学計算 |
Research Abstract |
本年度は不活性結合開裂を含む金属触媒反応機構の研究実施のために,いくつかのプロジェクトを同時並行して行った。まだ研究成果を学術誌論文として報告していないので、研究進捗状況のみ簡単に報告する。 1.Rhによるアリルアミン類の不斉水素転移反応:本研究では、3-methylbut-2-en-1-amineにRh(I)-BINAP錯体が配位することで開始する反応経路を密度汎関数法により検討した。1,3-水素転移の遷移状態の構造最適化の途中でNMe_3がRhから解離したことから、アミンが2分子配位したままの機構を経由せず、アミンは途中1分子だけロジウムに配位した機構を経由することを示した。さらに、Rh(BINAP)がアリル基のオレフィンに配位してからC-H結合の切断が起きて反応が進行することを示した。主エナンチオマーを生成する反応経路の検討はほぼ終わっている。エナンチオ選択性の原因の検討などが今後の課題である。 2.Rh,Ni触媒による,C-C結合の開裂やC-H結合の開裂を伴う、金属化学種の触媒サイクル全体の反応機構を、量子化学計算による解明を今年度開始した(大阪大学・茶谷研究室との共同研究)。アリールメチルエーテルとアリールホウ酸エステルとの芳香族クロスカップリング反応の解明を現在行っている。C-CN結合の切断を経由する、Rh触媒によるニトリルのボリル化反応についての検討も開始し、現在も行っている。 3.ヘム触媒反応機構解明:プロスタサイクリン合成酵素(PGIS)と、基質であるプロスタグランジンH_2アナログとの複合体の水中での分子動力学シミュレーションを行った。酵素の反応中心の疎水性が高いことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度報告した学術誌論文の数は1報のみであるが、今年度は本課題の研究開始の年度であり、研究終了に時間がかかるためである。ほぼ研究計画通りには進んでおり、多くの課題に関して学会発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
1.「Rhによる不斉水素転移反応」の課題については、マイナーなエナンチオマーを与える経路の完全解明を行う。 2.Pd,Rh,Niによるc-H,c-c結合開裂反応機構の検討については、より実験に即したモデルを用いて金属化学種の触媒サイクル全体の反応機構を検討する必要がある。 3.生化学的に重要なヘム酵素反応である,シクロオキシゲナーゼ,プロスタサイクリン合成酵素およびアレンオキシド生合成酵素の反応機構を,分子動力学法とQM/MM法を併用して昨年に引き続き検討する。この際、QM/MM法を用いるが、ヘムを含む酵素(プロスタサイクリン、アレンオキシド合成酵素)の反応機構は、QM/MM法の手法選択が難しく、時間がかかると推測される。
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