2011 Fiscal Year Annual Research Report
炭素-硫黄結合ならびに酸素-水素結合の同時活性化を鍵とする新規分子変換反応の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
23105508
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
中田 憲男 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (50375416)
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Keywords | 炭素-硫黄結合活性化 / 酸素-水素結合活性化 / 白金 / パラジウム / オキサメタラサイクル |
Research Abstract |
本研究課題では、申請者らが発見した白金錯体を用いた2-ヒドロキシベンジルスルフィド誘導体1の炭素-硫黄結合と酸素-水素結合の同時活性化によるプラチナサイクル2の生成を鍵反応とし、中心金属の汎用性ならびに2位が官能基化されたベンジルスルフィド誘導体1の炭素-硫黄結合とヘテロ元素-水素結合の同時活性化を可能とする基質一般性の解明を目的とする。本年度は、この1の同時活性化反応を白金0価錯体の代わりにパラジウム0価錯体を用いて検討し、その結果を以下に報告する。 まず、2-ヒドロキシベンジルフェニルスルフィド3と1.5当量の[Pd(PPh_3)_4]との反応をトルエン中で行ったところ、対応する1,2-オキサパラダサイクルは確認されず、新規な五配位リン化合物であるオキシホスホラン4が生成した。一方、トリメチルホスフィンを有するパラジウム0価錯体[Pd(PMe_3)_4]をin situで発生させ、同様の反応を検討したところ、3のsp^3混成炭素-硫黄結合と酸素-水素結合の同時活性化による1,2-オキサパラダサイクル5とtrans-ジチオラト錯体6がNMR比3:1で得られた。 次に、これらの結合活性化を鍵過程とする触媒的分子変換反応の開発を目的に、触媒量のパラジウム0価錯体存在下、3とアルキンとの反応を検討した。10mol%の[Pd(C_3H_5)(C_5H_5)]と種々の単座あるいは二座ホスフィン存在下、3とジメチルアセチレンジカルボキシラートをトルエン還流条件で15時間作用させたところ、3のベンジル炭素-硫黄結合とフェノキシ酸素-水素結合の同時解裂に加え、アルキンの挿入反応により生成した4H-1-ベンゾピラン7とビニルスルフィド8がそれぞれ得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、申請者らが発見した白金錯体による不活性な二結合の同時活性化について、使用する10族金属0価錯体の反応性の違いを白金-パラジウム間で明らかにすることができた。特にパラジウム錯体を触媒として用いた分子変換反応では、使用するリン配位子の違いにより異なる生成物を与えることを見出した。引き続き、今年度においても使用する金属錯体や配位子の一般性を明らかにするため、ニッケル錯体を用いた同様の結合活性化反応を検討し、反応性の類似点あるいは相違点を見出していく。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに基質として用いてきた2-ヒドロキシベンジルスルフィド誘導体の2位のヒドロキシル基を窒素官能基であるアミノ基やアミド基に置き換えた2-アミノ(あるいはアミド)ベンジルスルフィド誘導体と10族遷移金属錯体との反応から、新規な炭素-硫黄結合と窒素-水素結合の同時活性化反応を開拓する。例えば、白金0価錯体と2-アミノ(あるいはアミド)ベンジルスルフィド誘導体との反応では、対応するアミドメタラサイクルの生成が予想でき、これらの分子構造や反応性に加え、結合解裂メカニズムのついても理論計算を駆使して詳細に解明していく。 また、この結合活性化を鍵過程とする触媒的分子変換反応を設計し、種々のアセチレン類との反応から新たな炭素-炭素結合ならびに窒素-炭素結合が形成した4H-ヒドロキノリン誘導体への合成展開を10族金属0価錯体、特に高い反応性が期待できるパラジウムやニッケル錯体を触媒として行う。
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