2011 Fiscal Year Annual Research Report
炭素-水素結合活性化に基づく生物活性物質の合成
Publicly Offered Research
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
23105517
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 潤一郎 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助教 (00529026)
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Keywords | 合成化学 / 天然物合成 / 生理活性物質 / クロスカップリング / 炭素-水素結合官能基化 / パラジウム触媒 / 有機化学 / ヘテロ芳香環 |
Research Abstract |
本申請者の研究の焦点は、生物活性物質の迅速化学合成に不可欠な「真に自在な芳香環連結反応」の開発とこれを用いた標的物質の超短工程合成の実践である。本年度は以下の3種類の反応開発と標的物質の合成を行なった。 1.ヘテロ芳香環の直接アリール化反応はPd,Rh,Ru触媒などが用いられてきたが、安価かつユビキタスな金属触媒系へのシフトが起こりつつある。我々は3種類のアリール化剤を用いた安価なNi触媒によるヘテロ芳香環の直接アリール化反応を見出した。また、本触媒反応を用いた痛風治療薬febuxostatやtexaline、muscoride Aの迅速合成に成功した。 2.二つの異なるPd触媒を用いたチオフェン類のC-Hアリール化を見出した。一つ目は、PdCl_2/P[OCH(CF_3)_2]_3/Ag_2CO_3触媒を用いたチオフェン類とヨウ化アリールとの反応、二つ目は、Pd(OAc)_2/bipy/TEMPO触媒を用いたチオフェン類とアリールボロン酸の反応である。本触媒系は、種々のチオフェン類において4位(Sのβ位)C-H結合の選択的アリール化を促進することが明らかとなった。さらに後者の反応はチアゾール類を用いても4位選択的に進行する。この反応は、メルク社による新規アルツハイマー病治療薬候補化合物SCH-785532の主骨格や抗腫瘍活性を有するCKD-516の迅速合成に有効であることを実証した。 3.C-H結合のみを利用したヘテロ芳香環連結反応の開発に着手した結果、インドール誘導体とアジンN-オキシドのC-H/C-H直接連結反応が進行することを見出した。DNA結合能を有するeudistomin Uの簡便な合成にも成功した。さらに、セリン-スレオニンPP阻害活性をもつ海洋天然物dragmacidin Dの全合成を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2年間で予定していたC-H結合直接反応の開発及び標的物質群の合成を9割方完了することができためである。
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Strategy for Future Research Activity |
既に昨年度から推進している本研究により、様々な芳香環直接連結反応の開発、それらを用いた生物活性物質の短工程合成を実現した。本年度は新しい反応開発、生物活性物質の合成に加え、合成した化合物群のケミカルバイオロジー研究を行い、本研究のさらなるアウトプットの拡大を狙う。
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