2011 Fiscal Year Annual Research Report
水素-ヘテロ原子結合を起点とする不活性結合の活性化
Publicly Offered Research
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
23105531
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高井 和彦 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (00144329)
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Keywords | C-H活性化 / ロジウム / スポロシラビフルオレン / ホスファフルオレン / パラジウム / 軸性キラリティー / Si-H結合 |
Research Abstract |
C-H結合活性化においては、その活性化が難しいだけではなく、数多くあるC-H結合において目的のC-Hだけを活性化する位置選択性が重要となる。これまでは金属に配位するヘテロ原子(Lewis塩基)をもつ配向基を使い、配位不飽和な遷移金属活性種を目的のC-H結合に近づける手法がおもに用いられてきた。2010年に我々は新しいシラフルオレン合成を報告した.この反応はヘテロ原子-水素結合を活性化し、それを起点として炭素-ヘテロ結合を形成した。最初にケイ素-水素がWilkinson触媒に酸化的付加し、生じた反応活性種Si-Rh-Hが分子内のC-H結合と、σ結合メタセシスあるいは挿入をおこし、脱水素とともにケイ素-炭素結合が生成している。適切な位置にヘテロ元素-水素結合を置いて発生する金属活性種を近づけ、C-H結合の活性化をおこなうこの反応は、位置選択的な結合活性化における突破口となる。本研究では、この概念を利用して新反応を開発し、また、この反応を不斉合成に応用した。(1)2010年の反応を分子内で2回おこなうとスピロシラビフルオレンが生成する。キラルなリン配位子を用い、軸性キラリティーを有するスピロシラビフルオレンを合成した。反応では、Wilkinson錯体に代え、[RhCl(cod)]_2にキラルなリン配位子(R)-BINAPを添加した。スピロ型の四級ケイ素を有する化合物の不斉合成の例は少ない。この反応ではスピロの中心原子と炭素との結合を一挙に二つ構築している。なお、生成物の立体化学は、キラルHPLCで分離したあと、単結晶X線構造解析により決定した。(2)ビフェニル基を有するヒドロホスフィンオキシドをパラジウム(II)触媒存在下に加熱すると、ホスファフルオレン誘導体が得られることを見いだした。本反応もP-H結合およびC-H結合活性化による脱水素を伴なう反応である。従来、この化合物はジブロモビフェニルをジリチオ化することで得られるジリチオビフェニルに対応するリンの塩化物を作用させ、水で後処理することで合成していた。この反応はパラジウム(0)錯体でも進行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
スピロシラビフルオレンや光学活性なリン化合物の合成や光学分割をおこなうだけではなく、単結晶を作成し、X線による結晶構造解析をおこなうことができた。また、新しいオルト位ホウ素化反応を開発した。これらの研究を2012年3月末におこなわれた日本化学会第92春季年会で発表した。 .
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Strategy for Future Research Activity |
競争の激しい分野なので、研究を着実に進めていく予定である。とくに新しいオルト位ホウ素化反応とC(sp^3)-H結合の活性化については、できるだけ早く論文としてまとめることが必要となっている。
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