2011 Fiscal Year Annual Research Report
共役ジエンの新規活性化に基づく高選択的炭素・炭素結合形成反応の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
23105538
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
木村 正成 長崎大学, 工学研究科, 教授 (10274622)
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Keywords | 合成化学 / 分子活性化 / 炭素結合 / ニッケル / 二酸化炭素 / パラジウム / カップリング / アリル化 |
Research Abstract |
共役ジエンはテルペンやポリマー合成の重要な炭素資源として汎用されている。しかしながら、共役ジエンは複雑な付加反応等の副反応を受けやすく反応制御が極めて困難である。従って、共役ジエンを用いた研究では、反応条件が比較的限定されている場合が多い。本研究では、穏和な条件下で副生成物を与えず共役ジエンを高選択的かつ効率的な炭素-炭素結合形成の炭素源として活用することを目的とした。 平成23年度では、ニッケル触媒存在下、二酸化炭素から生じるメタラサイクルと共役ジエンによる反応を活用し、新しい炭素-炭素結合形成反応の開発を行った。 具体的には、ブタジエン又はイソプレンを求核種とする炭素-炭素結合形成反応を検討した。常圧二酸化炭素共存下、THF 溶媒中、ニッケル触媒とブタジエン及びアルキンを添加した。その結果、ブタジエンが二量化反応を伴いつつ、二酸化炭素とアルキンの同時挿入を可能にした。同形式の反応はアルキンの代わりとしてノルボルネン存在下でも観察された。 申請者はこれまで、共役ジエンとアルデヒド又はアルドイミンによるカップリング反応を開発してきた。その場合、ブタジエンを炭素源として用いると、ブタジエンの二量化反応を伴った炭素-炭素結合形成反応が進行したが、完全にブタジエンは直鎖型の二量化反応を引き起こした。一方、二酸化炭素共存下では、ブタジエンの二量化反応が分岐型で進行する点が大きく異なる。同様な反応条件下で、二酸化炭素とアルドイミンを求電子剤として使い分けることによって、ブタジエンの二量化反応の位置選択性が制御できる点は極めて興味深い。本反応は今後、不飽和カルボン酸の選択的合成法として有用である。 以上の様に、共役ジエンから生じるメタラサイクルと二酸化炭素・不飽和炭化水素化合物・有機金属化合物の反応の特徴を活かしたタンデム反応が収率良く進行することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共役ジエンやアセチレン及びノルボルネンなどの不飽和炭化水素化合物を求核種として用い,カルボニル求電子剤に対する炭素・炭素結合形成反応を開発した。生成物は不飽和カルボン酸や不飽和アミン等の様々な生理活性物質として有用である。また,ポリフェノールやインドールなど芳香族化合物のC-H活性化を利用した単工程合成反応の開発にも成功している。これらは,申請書の計画内容に即して順調に進められている。更に,二酸化炭素が共役ジエンや共役エン-イン化合物と付加反応する新規カップリング反応を見出した。本反応は,今後,二酸化炭素の新規導入手法として期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
グラファイト及びメソポーラスシリカ等の細孔系固体触媒を反応場とする新しい触媒反応を開発する。固体触媒細孔内に配位子を設計・修飾し,ニッケル及びパラジウムなどの遷移金属触媒を担持する。これまで,メソポーラスシリカを始め,様々な固体触媒の細孔内に遷移金属を含浸法で蒸着させる固体触媒合成法が多々報告されているものの,配位子のデザイン,構築,金属触媒の集積化を可能にした例はない。本研究は同班員の北海道大学・原賢二先生と共同研究として検討する予定である。本触媒を合成し,最終的には二酸化炭素の直接的な変換反応等,高効率有機合成反応の開発へ展開する予定である。
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