2011 Fiscal Year Annual Research Report
ジメタラカルベンおよび高周期同族体を反応活性種とする分子活性化
Publicly Offered Research
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
23105540
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
竹本 真 大阪府立大学, 理学系研究科, 准教授 (20347511)
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Keywords | ジメタラカルベン / メタロカルベン / カルベン / スタンニレン / メタリレン / メチリジン / スタニレン / イミド錯体 |
Research Abstract |
カルベンは2価の炭素原子を特徴とする反応性に富んだ化学種であり、sp^3C-H結合への挿入をはじめ、様々な反応性を示すことが知られている。また、カルベンの高周期同族体であるメタリレンER_2(E=Si、Ge、Sn)も典型元素化学の分野で重要な研究対象となっている。近年、置換基として窒素などのヘテロ原子を導入した安定カルベンが研究され、従来のカルベンでは観測されなかった多彩な反応性や遷移金属錯体触媒の配位子としての有用性などカルベンの化学における新しい一面が見出された。しかしながら、ヘテロ原子として遷移金属を導入したカルベン、すなわちメタラカルベンはまだ合成されていない。本研究では、2つの遷移金属を置換基とするジメタラカルベンおよびその高周期同族体を反応活性種とする新たな物質変換反応の開発を目指して研究に取り組み、以下の成果を挙げた。 カチオン性2核ルテニウムメチリジン錯体を低温で脱プロトン化したのち、種々の基質と反応させることによってジルテナカルベンの発生と捕捉を行なった。基質としてメチレン化試薬Ph2S=CH2を加えた場合にはビニリデン錯体を経由してアレン錯体が生成することが分かった。また、硫黄やセレンを用いた場合には対応するカルコゲノカルボニル錯体が得られた。これらは、メチリジン錯体がジルテナカルベンの合成等価体となることを示している。さらに、金(1)錯体などの遷移金属種との反応ではジルテナカルベンが配位子となった遷移金属錯体が得られることも分かった。以上により、ジメタラカルベンという新しいタイプのカルベンの創出に成功した。 ジルテナスタンニレンの合成にも取り粗んだ結果、その前駆体候補である2核ルテニウムジアセトキシスタンニレン錯体、クロロスタンニリン錯体およびトウフラートイオンが弱く配位した原子状スズ錯体の合成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目標であるジルテナカルベンの発生の確認と予備的な反応性の調査を達成した。さらに、ジルテナスタンニレンの合成に向けた前駆体錯体の合成にも成功した。以上により、反応活性種としてのジルテナカルベンおよびその高周期同族体の創出を目指した研究を着実に進展させることができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
ジルテナスタンニレンの発生方法を見出し、捕捉実験を通じて反応性の調査を行なう。さらに、ジルテナカルベンおよびジルテナスタンニレンを反応活性種とする触媒的分子変換反応を開発する。
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Research Products
(5 results)