Research Abstract |
効率の高い優れた合成反応の開発は,有機合成化学に課された重要な課題の一つである。特に,炭素-水素結合の活性化反応は,ハロゲン等の脱離基を導入する事無く新たな官能基を導入する事が可能である事から,グリーンケミストリーの立場からも優れた合成反応となり得る。本研究においては,[1,5]-水素移動反応を基軸とする分子内redox反応に着目し,研究を進めた。この形式の反応は,分子内において,酸化反応と還元反応が同時に進行するため,酸化剤等を用いる事をが不要となり,アトムエコノミーの観点からも優れた反応である。これまで,我々は,窒素原子または酸素原子のα位の炭素-水素結合の活性化反応を中心に研究を進めてきたが,ヘテロ原子を有しない系での炭素-水素結合活性化反応の開発を目指した。その結果,電子供与能の高いp-メトキシフェニル基を導入し,求電子部位にバルビツール酸を有する基質を用い,ルイス酸としてSc(OTf)_3を用いる事により,効率的にsp^3炭素-水素結合が活性化され,[1,5]-水素移動が進行し,対応するテトラリン誘導体が収率良く得られる事を見出した。また,移動する水素原子の隣接位のアリール基の置換基効果も詳細に検討したところ,p-メトキシフェニル基の様な,電子供与性基の存在により,反応が大きく促進されること,また,フェニル基でも触媒量を増やす事により効率良く反応が進行する事も明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予想通り,ヘテロ原子を含まない基質においても,分子内redox反応が効率良く進行する事を見出しており,おおむね順調に進展した。
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