2011 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属錯体触媒によるC-H結合活性化を経由する多成分反応の確立
Publicly Offered Research
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
23105542
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
緒方 賢一 中央大学, 理工学部, 助教 (60431970)
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Keywords | 3成分反応 / 遷移金属錯体触媒 / 結合活性化 / アルケン |
Research Abstract |
本研究課題においては、主にC-H結合を始めとした結合活性化を伴う新しい多成分反応の開発を目的としている。特に今年度については、遷移金属錯体触媒下における不飽和化合物を用いた3分子の有機分子による多成分反応の開発を行った。そのうちの1つは、ニッケル錯体触媒存在下における、還元剤を用いたカルボニル化合物とアルケン化合物との還元的カップリング反応である。本課題においては、アルケン化合物として環歪みによる高い反応性を有するアルケンであるメチレンシクロプロパンやノルボルネンを利用した。その結果、ニッケル錯体触媒下において、これらのアルケンとカルボニル化合物との反応を、還元剤を用いて行う事により、シクロプロパン環のC-C結合や芳香環C-H結合の切断を伴う3成分反応が進行する事を明らかにした。また、同様の組み合わせのアルケンとカルボニル化合物を用いた反応の場合においても、用いるニッケル錯体触媒の配位子や還元剤を選択する事により、これらC-CやC-H結合の切断を伴わない反応が進行する事も明らかにした。この結果は、これらのC-CやC-H結合の活性化は、利用する錯体触媒や還元剤によって制御されている事を示唆するものであると考えられる。さらに、反応に用いるカルボニル化合物として、アルデヒドの代わりにエノンを用いる事により、メチレンシクロプロパンのアルキル置換基の特異的なC(sp^3)-H結合の切断を伴う反応の進行も確認している。 また、2つめの研究成果として、今回ロジウム錯体触媒を用いる事により、アルキンのC-H結合の切断を利用した特定の不飽和化合物との特異的な3成分反応についての開発にも成功しており、現在さらに検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究では、いくつかの遷移金属錯体触媒を用いた3成分反応の開発に成功した。また、本課題の中核であるC-H結合の活性化を含む反応開発においても、反応に用いるアルキンのC(sp)-H結合や有機基質のアルキル基のC(sp^3)-H結合の切断を経由する新反応の開発にも成功している。そのため、本研究課題の遂行は、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題における2年目については、1年目において開発に成功したC-H結合やC-C結合の活性化反応の更なる展開を行う。反応には、ニッケルやロジウムといった後周期遷移金属の錯体触媒を引き続き利用する。具体的な反応開発については、これまでに見いだした反応において、利用可能な有機基質の適応範囲の調査を行う。また、それにより得られる知見を基にして、更なる新しい組み合わせの有機分子による多成分反応の開発へと展開する。また、2年目においては、1年目に得られた種類の反応にこだわらず、新しいC-H結合活性化を経由する新反応開発も行う予定である。
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