2011 Fiscal Year Annual Research Report
内部アルキンからの二置換ビニリデンの直截合成法開発と新規分子変換触媒への応用
Publicly Offered Research
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
23105543
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
武藤 雄一郎 中央大学, 理工学部, 助教 (50453676)
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Keywords | 二置換ビニリデン / 内部アルキン / ルテニウム / 鉄 / ビニリデン転位 / オスミウム / シクロペンタジエニル |
Research Abstract |
遷移金属錯体上で内部アルキンが炭素二置換ビニリデンへの転位については、少数のアシルアルキンの転位が報告されているのみで一般性についての検討は行なわれてこなかった。二置換ビニリデン錯体はアルキニル錯体の求電子的C-アルキル化にほぼ限られてきたため種々の置換基を導入することが困難で、錯体レベルでも未開拓であるのが現状である。末端アルキンからのビニリデン転位が有機合成反応に広く応用されていることを考えると、二置換ビニリデン錯体をより直載的かつ自在に調製する方法の開発が必要なことは明らかである。そこで本年度は、CpRu錯体におけるジホスフィン配位子のキレート環サイズに着目し、検討を行った。 本反応におけるジホスフィン配位子の効果を調べたところ、DPPP,DPPB,DPPF配位子を持つカチオン性のCpRu錯体上でMeOC_6H_4C≡CPhは容易に対応するビニリデン配位子へと変換された。 一方、キレート環が小さいdppm配位子を持つCpRu錯体[CpRu(dppm)]^+を用いた場合には、予想に反してビニリデン錯体は得られず、最終生成物として(アルケニルホスホニオ)フェニル錯体[CpRu{Ph_2PCH_2P(C_6H_4)Ph(η^2-CPh=CHPh)}][BAr^F_4]が生成した。反応を^<31>P{^1H}NMRにより追跡したところ、一旦対応するビニリデン錯体が形成され、その後(アルケニルホスホニオ)フェニル錯体へと完全に変換されることがわかった。ビニリデンα炭素へのdppmの求核攻撃が進行した場合、1,1-ジフェニルエテニル基を持つ錯体が生成するが、本反応ではそのような錯体は得られていない。したがって、ビニリデン錯体はアルキン錯体を平衡的に生成し、dppmの配位アルキン炭素への求核攻撃、オルトメタル化-還元的脱離により(アルケニルホスホニオ)フェニル錯体が生成すると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
補助配位子が内部アルキンのビニリデン転位に及ぼす影響を調べ、どういう配位子系のときに本転位反応が効率良く起こるかを明らかにすることができ、昨年度までに見出していた成果をさらに発展させることができた。すでに学会では報告しており、また論文を作成中である。反応速度論検討に適した反応系を探索中であることから、反応速度論に基づく議論はまだ不十分であるものの、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
二置換ビニリデン錯体の生成機構についてさらに詳しく検討する。P_3O_9ルテニウム錯体においては、リン原子上の置換基がビニリデン転位の速度に影響することを見出している。本研究でもこの点は反応速度論などから詳細に検討し、効果的な配位子系を明らかにする。現在、どの配位子系の場合に二置換ビニリデン錯体が容易に生成するか調査中である。予備的には、ホスフィン上のフェニル基をメチル基に置換していくと、ビニリデン転位の反応速度は遅くなる傾向にあることがわかっており、これを定量的に評価したい。 二置換ビニリデン錯体を経由する新規触媒系の構築へ向けて、遷移状態の計算を行なっている化学者と共同研究することにより理論面からも詳細に考察する。
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Research Products
(22 results)