2011 Fiscal Year Annual Research Report
合成的活用を考慮した配向基による炭素-水素結合活性化の新展開
Publicly Offered Research
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
23105545
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
柴田 高範 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80265735)
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Keywords | 選択的合成・反応 / 有機金属触媒 / 不斉合成 / 触媒設計・反応 |
Research Abstract |
遷移金属触媒を用いる炭素-水素結合の直接的な活性化反応は、予め基質を活性化するための官能基の導入が不要であり、その結果、反応後に導入した官能基由来の廃棄物が生成しない原子効率の観点から理想的な合成変換と言える。これまで配向基を利用した反応が多数知られているが、そのほとんどがsp2C-H結合活性化であり、また多くの場合100℃以上の加熱条件を必要としている。今回報告者は、カチオン性イリジウム触媒を用いることにより次の4つの反応を開発した。 まず、シクロペンタジエニル配位子を有するカチオン性イリジウム錯体と触媒量の酢酸塩の組み合わせにより、カルボニル基を配向基とするsp2C-H結合活性化、カルボニルへの分子内1,2-付加、脱水反応が室温で進行し、多置換ベンゾヘテロールの位置選択的合成できることを見いだした。次に、配向基としてウレア基を用いることにより、第二級sp3C-H結合活性化が進行し、アルキンの分子内挿入、引き続く二重結合の異性化により2,3-二置換インドールが得られた。切断可能なC-H結合は、ベンジル位とアリル位に限定されるが、報告例が少ない第二級sp3C-H結合活性化を伴う炭素骨格構築法である。さらに、ピリジルアミノ基を配向基として用いたところ、エチル基やブチル基などのアルキル鎖上の第二級sp3C-H結合のエナンチオ選択的活性化が進行し、引き続く種々のアルケンとの反応により、キラルアミンが得られた。本反応は、酸化剤やラジカル経由の反応を除いて、初めての高エナンチオ選択かつ触媒的不斉C-H結合活性化の例である。そして、本反応をN-H結合活性化によるアルケンへの不斉ヒドロアミノ化へ応用した。基質として2-ピリジルアミンを用いることで、反応はマルコフニコフ選択的に進行し、分岐型アミンが高鏡像体過剰率で得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画通り、従来例の少ない第二級sp3C-H結合活性化を達成し、合成上有用な多置換インドール合成を行った。そして、第二級sp3C-H結合の不斉活性化をも達成し、キラルアミンの高エナンチオ選択合成法を確立した。さらに、その研究過程で見いだした知見を端緒として、N-H結合の活性化による不斉ヒドロアミノ化を見いだした。
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Strategy for Future Research Activity |
C-H結合活性化の際に利用する「配向基」の一般化が重要な課題であり、その合成的利用を視野に入れた新規な「配向基」の開発が必要である。
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