2011 Fiscal Year Annual Research Report
小さな遷移金属と大きな配位子で生み出す極小反応場での炭素ー炭素結合形成
Publicly Offered Research
Project Area | Molecule Activation Directed toward Straightforward Synthesis |
Project/Area Number |
23105546
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
生越 専介 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30252589)
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Keywords | 触媒 / 合成化学 / 有機金属 / 反応場 |
Research Abstract |
これまでにも、電子不足アルケンとアルキン類との環化反応は数多く行われてきた。しかしながら、大半の反応においては[2+2+2]環化付加反応が進行するためにシクロヘキサジエン誘導体あるいはシクロヘキセン誘導体が得られる事が報告されていた。これは、三分子目の不飽和化合物の挿入反応が、メタラシクロペンテンからのシクロブテンの還元的脱離よりも優先して反応が進行してしまうためであった。そのため、三分子目の挿入を抑制し素早く還元的脱離を進行させる触媒システムが、シクロブテン類の合成には必要となる。そこで、基質として共役エンインを用いることにより、三分子目の配位を抑制するとともに、原子半径の小さなニッケルに対して、立体的にPCy3よりも嵩高いNHC配位子を用いることで還元的脱離を促進させ選択的にシクロブテン誘導体を与える反応の開発を行った。実際にエンインを基質として用いた際に、少量ではあるがシクロブテン誘導体が生成することを確かめている。シクロペンテノンと1-ヘキセン-3-インとの反応において条件検討を行った。その結果Ni(cod)2/IPr 5mol%存在下、ジオキサンを溶媒として80 °Cにて反応させた時に収率80%(単離収率73%)にて目的とする化合物を得た。本反応条件を、最適化反応条件として種々のエノン類と1,3-エンイン類との反応を検討した。反応は、シクロペンテノンやシクロへキセノンとの反応は、いずれも効率よく進行した。アルキン末端にTMS基を持つ、エンインとの反応においては33%と低収率であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とする反応の開発に関しては、順調に進展しているものと考えている。 特に、環状エノン、鎖状エノンの両者に対して有効な反応であることを実証できた事は意義深い成果である。既に報告されている、ニッケル触媒を用いる反応においては鎖状エノンの場合には、エノン2分子とアルキン1分子との[2+2+2]環化付加反応が進行し、シクロヘキセン誘導体が生成する。また、環状エノンの場合には、エノン1分子とアルキン2分子との[2+2+2]環化付加反応が進行し、シクロヘキサジエン誘導体が生成する。本研究では、これらとは一線を画し、いずれの場合にも選択的にシクロブテン誘導体与える反応へと展開した。これは従来の達成目的を十分に満たしているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、より多様なアルケン類に対して適用できる反応系の確立を目指し、α,β-不飽和エステル、α,β-不飽和アミド、ビニルホスホネートのような基質を選択し研究を展開する。更には、環状エノン、鎖状エノンそれぞれを用いた際に発生する反応中間体と考えられるニッケル錯体中間体の単離と同定を行う。また、単離したニッケル錯体とアルキン類との反応により反応中間体としての作用を検証することで、反応機構の解明を行う。
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Research Products
(9 results)