2011 Fiscal Year Annual Research Report
格子QCDに対する電磁相互作用の導入
Publicly Offered Research
Project Area | Research on the Emergence of Hierarchical Structure of Matter by Bridging Particle, Nuclear and Astrophysics in Computational Science |
Project/Area Number |
23105701
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
谷口 裕介 筑波大学, 数理物質系, 講師 (60322012)
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Keywords | 格子QCD / QED / 摂動論 / π中間子 / 質量差 |
Research Abstract |
本研究の目的は、ハドロンにおける電磁相互作用(QED)野影響を、格子ゲージ理論の数値計算を用いて求めることにある。具体的な目標としては、パイ中間子の内、電荷を持つπ±と電荷を持たないπ0の質量の違いをQEDの立場から理解することを設定している。 この研究の前提として、まずクォーク質量を現実の値に近いところに置く必要がある。この質量は格子QCDの数値計算としては非常に軽いもので、そのような点における数値計算は非常に困難であり、その実行臼体が最先端の研究テーマとなるべきものである。 この前提条件に対する解決策の一つとして、昨年度は、smearirgを導入したクォーク作用の予備的な調査を行った。この作用を用いるとクォーク質量がかなり軽い領域においても、Hybrid Monte Carlo法におけるクォークforceが小さく抑えられ、現実的なコストで数値計算が実行出来ると考えられている。この視点から昨年度は特にsmearされたgauge linkをを持つDirac operatorに対して、本研究に用いるべきO(a)改良されたクォーク作用の具体的な形を求めることをまず第一の目標とした。特に格子上のDirac operatorの内、 ・hopping termのgauge linkのみをsmearしたクォーク作用 ・hopping termとclover termの両方をsmearしたクォーク作用 について、O(a)改良のためのclover項の係数及び、零質量に相当する質量パラメータの測定を行った。その結果、後者の作用においては、二つのパラメータに対する非摂動論的な補正の効果が小さく抑えられることが判明した。その一方でHMCに用いられるクォークforceの大きさは期待したほど小さくは抑えられていないことが判った。この点からはsmearingの種類を変えた調査の必要性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の前提条件となる、軽いクォーク質量における数値計算が想定していた以上に困難であり、まずこの問題自体に取り組む必要があったこと。また、その解決のための候補となるsmearingに関しては、研究が不十分であり、研究で用いるべき作用のパラメータ自体から決定する必要があった。更にsmearingを取り入れた数値計算のコードもまた開発する必要があった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、Schroedinger functionalに対して各種smearingの本格的な導入を行い、clover項に対する非摂動論的な補正を確定させる予定である。これにより、非摂動論的に改良されたクォーク作用を与えることが出来る。また、各種のsmearingに関しても、その効果を比較検討することができるようになる。こうして決定された作用は大規模数値シミュレーションで用いられる予定である。
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