2011 Fiscal Year Annual Research Report
状態密度法による有限密度QCDの計算方法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Research on the Emergence of Hierarchical Structure of Matter by Bridging Particle, Nuclear and Astrophysics in Computational Science |
Project/Area Number |
23105706
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
江尻 信司 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10401176)
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Keywords | 素粒子論 / 計算物理 |
Research Abstract |
「強い相互作用」の性質の理解に向けて、QCDの数値シミュレーションは非常に強力な研究方法であるが、高密度状態での数値シミュレーションについては未だに確立した方法がない。そのために高密度状態でのQCDの性質は依然として未知のままである。 高密度でのQCDの計算を実行しようとすると「符号問題」という深刻な問題が現れる。本研究では、有限密度QCDにおける符号問題の解決策を探り、高密度でも研究可能な数値シミュレーションの方法を開発する。その符号問題を避ける方法として、「状態密度法」という技法と組み合わせて、符号問題を多項式展開の収束性の問題にすりかえる方法を提案した。その方法がより高密度でのQCDの研究を可能にするのではないかと考えている。今年度は、その方法の有効性を確認するために、比較的計算が簡単なすべてのクォーク質量が重い場合の研究を行い、その状態密度法の中で最も重要な働きをする「確率分布関数」の性質について議論した。シミュレーションは、化学ポテンシャルゼロ、クォーク質量無限大の点で行い、パラメータをそのシミュレーションを行った点から連続的に変化させたときに、確率分布関数の形がどのように変化するかを調べた。そうすることにより、シミュレーションが直接行えない有限密度の点でも、確率分布関数の計算が可能であることを具体的に示すことができた。 さらに、クォークが軽い、現実のクォーク質量の場合への適用を目指した研究も、テスト計算として小さな格子上のシミュレーションで、現在進行している。符号問題を避ける方法もうまく機能していて、クォークが重い時と同様に、密度が高くなっても確率分布関数を計算できることが分かってきた。この研究を進め、高密度状態でのQCD研究のための信頼できる計算方法を確立したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
状態密度法が、重いクォークの領域でうまく機能することはほぼ確認でき、現在は論文の作成を行っている。クォークが軽い、現実のクォーク質量の場合への適用を目指した研究も、計算時間が比較的かからない小さな格子上のシミュレーションで現在進行していて、今のところ、おおむね肯定的な結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、状態密度法をクォークが軽い、現実のクォーク質量に近い場合に適用して、有限密度QCDの相構造の解明を目指したい。特に、高密度でカイラル相転移がクロスオーバーから一次相転移に変わることを、定性的なレベルでいいので示したい。
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