2011 Fiscal Year Annual Research Report
重力波観測を用いた中性子星内部における物質構造への制限の可能性
Publicly Offered Research
Project Area | Research on the Emergence of Hierarchical Structure of Matter by Bridging Particle, Nuclear and Astrophysics in Computational Science |
Project/Area Number |
23105711
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
祖谷 元 国立天文台, 理論研究部, 研究員 (70386720)
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Keywords | 宇宙物理 / 中性子星 / 重力波 / 状態方程式 |
Research Abstract |
超新星爆発後に生成される中性子星内部は非常に高密度となるため、その物性を地上実験から決めるのは困難である。そこで、我々は中性子星の天文学的観測を通した、超高密度領域での物性に対する制限の可能性を調べている。特に、中性子星の中心付近では、ハドロン物質がクォーク物質に相転移を起こすことが示唆されているため、そのような場合に相転移の効果が観測的にどのような影響を引き起こすかに着目している。そこで、まずはハドロン・クォーク相転移を含むような現実的な状態方程式を用いた、ズレ振動の振動数を求める為の数値コードを作成した。そして、ハドロン・クォーク物質から成る混合相の厚みをコントロールするパラメータであるハドロン・クォーク間の表面張力の値を幾つか用いて数値計算を行った。その結果、ハドロン・クォーク物質混合相におけるズレ振動数はその表面張力に強く依存すること、中性子星表面付近のクラスト層での振動数より大きなものになることが分かった。特に、ハドロン・クォーク相転移でのズレ振動は、クラスト層でのそれとは独立な振動であるため、場合によっては中性子星の振動に起因する観測量を用いて、ハドロン・クォーク間の表面張力の値への制限が出来るかもしれない。このような高密度領域での物性に対する制限は、地上での核実験とは全く異なる種類の観測的な制限であり、クォーク物質に体する相補的な制限が可能であると期待される。また、ハドロン・クォーク物質混合相におけるズレ振動の解析は本研究が初めてである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、振動計算の数値コードの作成、及びパラメータサーチができた。また、ハドロン物質からクォーク物質への相転移の痕跡を観測的に知得る可能性を初めて示した。
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Strategy for Future Research Activity |
中性子星からの重力波は未だ観測されていないが、軟γ線リピータでの巨大フレア現象における準周期的振動は中性子星の振動に起因していると考えられているので、この観測量との比較を行う。また、ハドロン・クォーク相転移が重力波にどのような影響を与えるかについて調べる。
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