2011 Fiscal Year Annual Research Report
磁性粒子上のソフト界面制御に向けた刺激応答性人工タンパク質の分子設計
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Soft-Interface Science |
Project/Area Number |
23106708
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
吉野 知子 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (30409750)
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Keywords | エラスチン様ポリペプチド / 磁性粒子 / タンパク質工学 / 温度応答性ポリマー |
Research Abstract |
本研究では、刺激応答性ポリマーの特性を模倣したアミノ酸配列から構成される、刺激応答性ポリペプチドを配した磁性粒子の設計を目的とした。本年度は、温度応答性ポリペプチドの探索に向けて、CFP及びYFPを用いた蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によるポリペプチド構造変化の評価系を構築した。磁性細菌をホストとして用い、刺激応答性ポリペプチドとして、加熱により収縮する特性を有する温度応答性ポリペプチドであるエラスチン様ポリペプチド(ELP、配列:(-Val-Pro-Gly-Val-Gly-)n)を用いた。ELP(n=10>をコードしたDNA配列の上流及び下流に蛍光タンパク質CFP及びYFP遺伝子をそれぞれ融合した人工遺伝子を構築した。設計した人工遺伝子を磁性細菌に導入し、得られた形質転換体からCFP、YFP、及びELP融合タンパク質発現磁性粒子を作製した。得られた磁性粒子表面で起きるELPの構造変化をFRETの効率により評価した結果、粒子を加熱した際にFRET率の上昇が示された。これはYFPとCFPが近傍に存在する時にのみ生じる蛍光特性であることから、ELPが加熱により収縮したことが示唆された。また、磁性粒子上でのELPの構造変化が生じる温度(相転移温度)の制御に向けて、(-Val-Pro-Gly-X-Gly-)nのX部位にバリン、アラニン、及びロイシンを導入した発現ベクターを構築し評価を行った。その結果、アミノ酸側鎖の疎水性度の増加により相転移温度が低下することが示された。本年度の成果として、FRETの効率を評価することにより、磁性粒子上で温度変化に伴ったポリペプチドの構造変化を評価できることが示された。さらにポリペプチドのアミノ酸変異を導入することで相転移温度が制御できた。従って、本手法を用いることで温度応答性ポリペプチドの粒子上での構造変化の評価及びその機能改変に利用できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究計画であった、温度応答性ポリペプチドの人工遺伝子の構築及び、温度応答性ポリペプチド発現磁性粒子の作製を行うことが出来た。更に作製した温度応答性人工タンパク質にアミノ酸変異を導入することで、相転移温度を制御可能であることが示された。従って刺激応答性人工タンパク質を構築する上で重要な進展が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、温度応答性ポリペプチドの探索に向けて、CFP及びYFPを用いた蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)によるポリペプチド構造変化の評価系を構築した。本手法は、CFPとYFPの間に存在するポリペプチドの配列を自由に設計できるため、ランダムミューテーションによる温度応答性ポリペプチドのライブラリー化も可能となる。さらに、磁性粒子は磁気誘導加熱により磁性粒子表面付近の温度上昇が可能なため、磁性粒子と温度応答性ポリペプチドを用いた様々な応用が期待できる。
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