2011 Fiscal Year Annual Research Report
膜エネルギー変化の制御と機能界面デザイン
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Soft-Interface Science |
Project/Area Number |
23106711
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高木 昌宏 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (00183434)
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Keywords | アルツハイマー / アミロイド / コレステロール / リポソーム |
Research Abstract |
(背景)アルツハイマー病原因物質であるアミロイドβペプチド(Aβ)は重合し、オリゴマー(oligomer)から線維(fibril)を形成する。Oligomerが非常に強い細胞毒性を持つと考えられているが、Aβの膜毒性機構は解明されていない。細胞膜中のコレステロール(Chol)は、アルツハイマー病のリスク因子と考えられている。しかし膜中Cholの酸化物(7-ケトコレステロール(7-keto))が及ぼすAβの膜毒性は明らかになっていない。本研究では、DOPC, DOPC/Chol, DOPC/Chol/7-ketoにおけるAβの膜局在・膜挙動解析を行い、Cholおよび7-ketoとAβの膜毒性について考察した。 (方法)Aβは蛍光標識と未標識の2種類を使用した。37℃でAβ-40は0, 24, 120時間、Aβ-42は0, 12, 48時間インキュベーションし、線維形成を行なった。各インキュベーション時間のAβ-40, Aβ-42 をOligomer、Pre-fibril、Fibrilとした。脂質膜はDOPC/Chol/7-keto = 100/0/0[2], 50/50/0, 50/40/10で混合し作成した。 (結果・考察)Chol含有膜は、DOPC膜よりAβの蛍光強度が低くなった。これは、CholはAβの膜への吸着を妨げ、膜の形態変化を起こしにくくする防護的役割を示している事を示している。また、DOPC/Chol/7-keto膜はDOPCおよび DOPC/Chol膜よりもAβの蛍光強度が高かった。これは、7-ketoがAβの膜への吸着を促進していることを示している。以上の解析から、Cholに比べて7-ketoは、Aβの吸着を促進し、膜毒性と関連した形態変化を起こしやすくすることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではコレステロールまたは7-ケトコレステロールを含有させた液滴・巨大リポソームを用いて、Aβ40, 42の膜への局在および、膜の形態変化を解析し、Aβに対するコレステロール・7-ケトコレステロールの役割を考察することを目的とした。 その結果、膜にコレステロールが入るとAβが吸着しにくくなることがわかった。これは、コレステロールは隣接している脂質分子を凝集させ、膜を固くすることによってAβが吸着しにくくなったと考えられる。そして、膜にコレステロールが入ると、Aβを添加した時の膜応答を低下させた。また、膜の形態変化のパターンは、DOPC膜にAβを添加した時に観察された、Sphero-stomatocyteの膜挙動が観察されなくなった。これは、Aβの吸着量が減少し、Aβによる自発曲率の変化が抑えられたためであると考えられる。 当初の目的通り、人工細胞膜を用いて、アミロイドとの相互作用について、膜脂質の組成との関係(特にコレステロール)を中心に、興味深い結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
膜中のコレステロールはAβに対してその吸着を阻害し、自発曲率の変化を抑える防護的役割を示すことが明らかとなった。 7-ケトコレステロールが持つ2つの親水基がDOPCを押し分けて隙間を作り、そこにAβが刺さるためであると考えられる。膜の形態変化のパターンは、DOPC/Chol膜にAβを添加した時には観察されなかった。7-ketoを添加した場合には、Sphero-stomatocyteの膜挙動が観察されるようになり、Aβの吸着量が増加したことにより、自発曲率を負に傾けた結果であると考えられる。以上の結果から、膜中のコレステロールはAβに対してその吸着を阻害し、自発曲率の変化を抑える防護的役割を示すことが明らかとなった。 現時点では、7-ケトコレステロールが持つ2つの親水基がDOPCを押し分けて隙間を作り、そこにAβが刺さるためであると考えているが、その詳細については、さらに実験を進める必要がある。現在、7-ケトコレステロール以外の酸化コレステロールも含めて、さらなる研究を進めている。
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