2011 Fiscal Year Annual Research Report
ソフト界面における多重膜形成のシナジズム
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Soft-Interface Science |
Project/Area Number |
23106715
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
瀧上 隆智 九州大学, 大学院・理学研究院, 准教授 (40271100)
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Keywords | ギブズ膜 / 多重膜 / シナジズム / X線反射率 |
Research Abstract |
ソフト界面に形成される吸着膜(ギブズ膜)は、生体膜などの複雑で柔らかい分子組織体の基本骨格を成しており、その構造と機能の相関解明にはソフト界面ギブズ膜の構造解析が不可欠である。本研究ではフルオロカーボンアルコールと末端水素化フルオロカーボンとの混合系ギブズ膜において新たに誘起された多重膜形成のシナジズムを対象に、その形成原理を凝縮単分子膜との構造相関に着目し、界面張力およびX線反射率(XR)測定により巨視・微視両観点から解明することを目指した。 本年度は、フルオロカーボン(FC)鎖を有するFCアルコール(FC120H)とFC鎖末端の一個のフッ素原子を水素に置換し、末端双極子を有する1H-ペルフルオロデカン(HFC10)との混合系およびハイドロカーボン(HC)鎖を有するHCアルコール(C200H)とHFC10との混合系に対して界面張力の高精度測定によるギブズ膜状態の解析とXR法による膜構造の解析を行い以下の知見を得た。 1)FC120HとHFC10との混合により初めて誘起される多重膜は、凝縮単分子膜において、単独では負吸着するHFC10分子がFC120Hと混和することがキーポイントとなっている。 2)一方で、弱いHC-FC鎖間相互作用のためHFC10はC200H凝縮単分子膜から排斥され、FC120H-HFC10系でみられた多重膜形成は起こらない。 3)XR測定から得られる電子密度プロファイルからもC200H凝縮膜中におけるHFC10の非混合が直接証明された。 4)さらに、FC120H-HFC10系の多重膜構造は、2次元固体である凝縮単分子膜上にヘキサン相よりもわずかに電子密度の高い層が積層したものとなっており、多重膜上層では分子のパッキングが緩やかである。 これらの成果は、国内外のコロイド・界面科学分野における主要学会において極めて新規性の高いものであると評価されるに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
界面張力(巨視的観点)測定から示唆されたフルオロカーボン化合物の混合系ギブズ膜における多重膜形成を、X線反射率(微視的観点)測定により得られる界面縦方向の電子密度プロファイルより直接証明することができた。さらに、多重膜における分子のパッキングは比較的緩く、エントロピー的に安定化された構造であることも突き止めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
多重膜形成のメカニズムを解き明かすためには、分子間に働く有効な相互作用が何であるかを知る必要がある。これには混合系の凝縮単分子膜におけるHFC10分子の配向を決定することが欠かせない。今後は、ヘテロダイン表面和周波分光法等の適用を試み、この点を解決する予定である。
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