2011 Fiscal Year Annual Research Report
基質界面の微細構造による細胞遊走の整流化制御と形質転換因子としての評価
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Soft-Interface Science |
Project/Area Number |
23106719
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
武田 直也 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (60338978)
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Keywords | 基質界面 / 電子線リソグラフィー / 細胞パターニング / 一方向細胞遊走誘導 / 間葉系幹細胞 / 細胞増殖 / 分化誘導 / メカノバイオロジー |
Research Abstract |
細胞と基質との界面においては、細胞の接着・伸展または移動に伴い細胞骨格タンパク質や接着関連タンパク質群が時空間的に変動し、これらタンパク質の動態や細胞の挙動は基質の物性や形状に大きく影響を受ける。接触する培養基材の硬さや構造などの材料特性に応じて幹細胞の分化や細胞の遊走などに違いが生じることも報告され、これら培養基材の特性を利用して積極的に細胞挙動を操作する試みが新たに広がりつつある。 そこで本研究では、電子線リソグラフィー技術を基盤とした独自の細胞パターニングシステムを用い、遊走化時の極性化した細胞形態を誘起するようにV字形状の非対称マイクロパターンを基質界面に一直線に連続的に設けて、パターンのみによる一定方向への長距離細胞遊走を制御する基質界面システムを開発した。細胞誘引因子の添加やフィプロネクチン等の細胞接着タンパク質のパターンへの塗布などを一切行わずに、最適化したパターン形状においてヒト骨髄由来の間葉系幹細胞(hbmMSC)を約95%の確率で一方向への遊走誘導することを達成した。続いて、遊走による細胞骨格タンパク質や接着タンパク質のダイナミックな変化に伴う機械的なストレスや細胞極性の連続的変化が細胞の他の活動に影響を及ぼすのではとの仮説の下、hbmMSCの遊走運動が増殖や分化挙動へ及ぼす効果を定量的に評価した。通常の平面床の培養器材で培養したコントロール実験では、細胞は3日間培養時において2.2倍に増殖したのに対し、V字パターン上で遊走していた細胞には分裂がほとんど観察されなかった。さらに、蛍光抗体染色法とqRT-PCRを用いての分化挙動の定量的評価では、5日間培養時の一方向遊走運動したhbmMSCでは幹細胞マーカーであるALCAMの減少が検出された。すなわち、上記仮説の検証と細胞挙動制御にむけての検討をさらに推進すべき有意な結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度計画の、[I]細胞の遊走制御能の向上に向けたマイクロパターンデザインの改善、を達成すると共に、翌年度計画の、[II]幹細胞など表現型を変化させる細胞種を用いた遊走運動方向制御の検討、ならびに[V]遊走運動制御による周期的な分子動態変化が細胞分化に与える影響の検討、を前倒しで推進し、誘導した一方向遊走運動が幹細胞の増殖・分化挙動に影響を及ぼすことを示唆する有意な知見を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
幹細胞マーカーに加えて、複数の細胞種の分化マーカーの発現をqRT-PCRおよび免疫蛍光染色により定量的に評価し、ヒト間葉系細胞の分化挙動を網羅的に解析する。特に同じ中胚葉由来の筋、骨と胚葉を超えた分化となる外肺葉由来の神経を対象として解析する。また、細胞遊走時の、基質界面近傍における接着斑形成や細胞骨格関連タンパク質の動態をTIRFなどのイメージング手法を用いて評価し、分子レベルでの遊走制御のメカニズムの検討と、遊走運動のストレスが幹紐胞の増殖・分化挙動に影響を及ぼす機構の解析を行う。異なる材料での細胞パターニング基板を用いて幹細胞の一方向遊走誘導と増殖・分化の評価も検討し、これらを統合して、細胞挙動の制御とそれを実現するための材料の表面形状や物性を含めた基質界面の設計手法の確立を目指す。
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