2011 Fiscal Year Annual Research Report
無機有機複合材料の新規製法創成に向けたシリコンバイオミネラル形成機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Fusion Materials: Creative Development of Materials and Exploration of Their Function through Molecular Control |
Project/Area Number |
23107521
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
清水 克彦 鳥取大学, 産学・地域連携推進機構, 准教授 (90326877)
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Keywords | 海綿動物 / 六放海綿 / シリカ / ヒスチジン / タンパク質 / バイオミネラリゼーション / 無機有機複合材料 |
Research Abstract |
本研究の目的は、六放海綿類カイロウドウケツのシリコンバイオミネラルに含有される有機分子を同定し、その分子構造および機能を解明することである。得られた成果に基づき、新たなシリコン機能材料の形成プロセスを提案することを最終的な目標とする。平成23年度は、カイロウドウケツシリコンバイオミネラル骨格に含有される有機分子の抽出、同定および構造の解明を計画した。 長崎大学水産学部附属練習船長崎丸でのビームトロールにより東シナ海(五島近海)水深約100mからカイロウドウケツ(Euplectella sp.)を採集した.また,Dr. J, C. Weaver (Harvard Univ.)よりカイロウドウケツ(Euplectella aspergillum)骨格を贈与していただいた. 個体の一部または骨格を次亜塩素酸ナトリウム水溶液で洗浄して骨格の外部に付着する有機分子を取り除いた後、シリカを溶解した。溶解液およびその残渣を回収し,遠心分離操作により水溶性画分と不溶性画分に分画した。有機成分はシリカ骨格の約0.1%であり、そのうち90%が不溶性分画に含まれていた。水溶性画分はpH5~6においてシリカ沈降活性を示した。その主要成分として、23kDaのタンパク質が見出された。このタンパク質をglassinと命名した。水溶性画分の酸加水分解物についてアミノ酸分析を行ったところ、アミノ酸の1/3がヒスチジンで占められており、glassinがヒスチジンに富んだタンパク質であることが推定された。 シリカの沈降を促進する有機分子として、これまでにシリカテイン、コラーゲン、シラフィンやポリアミンといった分子が見つかっている。今回見られた沈降したシリカの形状やpH特性はこれまでに見つかった分子が示した性質とは異なるものであり、カイロウドウケツのシリカ骨格にはシリカの形成に関与する新しいタイプの分子が存在していることが示唆される結果を得ることができた。このことは新たな融合マテリアルを創成する上で、重要な知見となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
glassinの一次構造解明を実施するため、そのcDNAクローニングを予定していたが、カイロウドウケツからのRNA抽出作業に予想以上に時間を費やし、cDNAクローニングの完了にはいたらなかった。このため、スケジュールの進行に遅れが出た。ただし、この問題は当初より想定していた範囲にあり、かつ、すでに解決済みである。一方、平成24年度に計画した機能解析を先行させ、計画を超えて結果を得るに至った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には、まず、平成23年度の実施計画であるglassinのcDNAクローニングを完了し、その一次構造を解明するとともに、組換えタンパク質構築システムを確立し、組換えタンパク質を大量発現させる。glassinの機能解析については平成23年度に天然タンパク質を利用してすでに先行しており、平成24年度には、組換えタンパク質が天然タンパク質の有する機能を保持していることを確認する。さらに、glassinを利用して新たなシリコン機能材料の形成プロセスを提案することとする。
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Research Products
(2 results)