Research Abstract |
単層カーボンナノチューブの周りにフラーレン層,その周りにデンドロン層,その周りにシリカ(SiO2)層を有するナノ同軸ケーブル構造の作製に世界で初めて成功した。これは,デンドロン型置換基の高い自己組織化能により,カーボンナノチューブの周りにフラロデンドロンが配列した超分子複合体を形成すること,および,超分子複合体表面のカルボキシル基が無機材料とのハイブリッド化の足場となることを利用しており,緻密に構造が制御され,かつ,常温常圧下で合成可能な新しい「融合マテリアル」合成法として興味が持たれる。得られた融合マテリアルの構造については,SEM観察により,単層カーボンナノチューブの高いアスペクト比を持つ繊維状の構造を維持したまま,表面へのシリカ(SiO2)層によるコーティングを実現していることや,各種スペクトルによって明らかにした。 さらに,得られたナノ同軸ケーブル状の材料が,光触媒機能を有することを明らかとした。単層カーボンナノチューブはp型半導体材料,フラーレンはn型半導体材料として知られており,ナノ同軸ケーブル構造中に1次元的なp-n接合界面が存在している。この繊維状p-n接合界面は理想的な界面構造と言うことができるが,実際に,可視光(450nm)における光水素発生の量子収率が0.31と,炭素材料中で最高の値が観測された。したがって,我々の提案した融合マテリアル合成法は,光機能材料合成の観点からも価値が高い。 本年度,新たに見出したデンドリマー型置換基を異種材料界面に用いるナノハイブリッド作製法は,今後,様々な「融合マテリアル」合成を考えるうえで非常に重要な手法になると期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,ナノカーボン融合マテリアルをデンドリマー型置換基を利用して合成し,その光機能を調べることで融合マテリアルの優位性を確かめたいという目的であったが,実際に検討をした結果,目的通りのナノ同軸ケーブル構造を持つ融合マテリアルを合成できただけでなく,その構造により,世界的に見てもトップレベルの機能性発現を可能にすることが明らかとなったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
独自に見出した融合マテリアル合成法を用い,ナノカーボン材料,および,無機材料,そして,それらを結びつけるデンドリマーの分子デザインについての検討を進めることで,光機能性融合マテリアル合成のための新しい「分子技術」を確立することを目指す。
|