2011 Fiscal Year Annual Research Report
熱力学的手法による生体膜モデル系における揺らぎの検出
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
23107704
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山村 泰久 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (80303337)
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Keywords | 揺らぎ / 脂質二分子膜 / 熱容量 / アルキル鎖 / 生体膜モデル系 |
Research Abstract |
脂質二分子膜を基本とする生体膜は,その様々な機能の発現に揺らぎが関与する典型的な生体分子系であり,この脂質二分子膜における揺らぎの検出と解明は重要な研究課題である.生体膜を構成する脂質は一般に長いアルキル鎖を1本ないし2本持ち,脂質二分子膜中ではこのアルキル鎖のコンフォメーションは常温程度の熱エネルギーで十分乱れている.このコンフォメーションの揺らぎにより,二分子膜の動的な変化や柔軟性,膜中への脂溶性等が維持され,生体膜として機能している.本研究では,脂質二分子膜の揺らぎに大きな影響を与える脂質のアルキル鎖に着目し,脂質二分子膜の構造が穏やかに崩壊する過程を利用し,揺らぎの情報の抽出を試みることが研究目的である.最終的には,脂質二分子膜に他の分子を導入することによる摂動を加え,より現実に近い生体膜モデル系における揺らぎ・ダイナミクスの情報を熱力学的な測定手法を用いて行うことを目的としている.脂質二分子膜のモデル化合物としてラメラ相を示す脂質二分子膜における脂質の分子構造とアルキル鎖のダイナミクスとの関係を明らかにし,またラメラ相の揺らぎが分子構造により違いが出ることを明らかにし,論文にまとめた.これを基にして,異分子摂動の影響を見るために用いる系の検討を進めた.また,アルキル鎖のダイナミクスに関して知見を得るために,液晶相におけるメソゲンのアルキル鎖のダイナミクスに関しての検討を行い,脂質二分子膜や液晶相などの柔らかい相におけるアルキル鎖のダイナミクスの重要性について検討を進めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
震災の影響で測定に用いる予定の装置に被害が出たために当初の研究計画に大きな支障が出たが,基本となる系に関する考察を進め,研究全体としては進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画を遂行するために,さらに研究対象の測定およびデータの解釈を進める.
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