2011 Fiscal Year Annual Research Report
高速1分子動態計測による膜タンパク質機能発現機構の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
23107706
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関口 博史 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特任助教 (00401563)
|
Keywords | 1分子計測 / 生物物理 / 揺らぎ |
Research Abstract |
隣接する神経細胞間の情報伝達は,主に神経伝達物質とその受容体である膜タンパク質を介して行われます。神経伝達のように速い応答が要求される系では,受容体である膜タンパク質の明確で且つ速い応答が必要で,その動的な機構の解明が望まれています。しかしながら,受容体のダイナミックな構造変化に関して実測する手法は充分に整備されていません。本研究課題では、タンパク質の分子内運動を精度良く検出可能なX線1分子追跡法に着目し、情報伝達に関わる分子として重要な膜タンパク質の揺らぎを伴う分子内構造変化を高精度(ピコメートル精度)、且つ高速(数マイクロ秒)に計測する基盤技術を開発を目指した. X線1分子追跡法は生体分子の内部運動を目的分子に標識した極微結晶の動きとしてモニターする手法である. 本手法の高速化については,CMOSカメラや高速シャッタの導入によって,金ナノ結晶条件を選べば8μs/fといった高速測定が可能となり,恒常的には100μs/fの測定が行えるようになった. 実際に,膜タンパク質の一つであるアセチルコリン受容体の動態計測に適用した.アセチルコリン受容体が高濃度に存在するシビレエイ膜画分を基板上に展開し,膜外領域特異的な抗体を介して金ナノ結晶を標識した.作動物質あるいは拮抗物質の存在条件で,膜外領域の運動について測定したところ,作動物質条件で傾斜方向の運動を伴う回転方向の運動が活性化することがわかった.これらの運動活性化と分子機構の関係については考察中である.また本手法で課題として挙げられていた大量データ解析の効率化については,自作プログラムを開発し,ある程度の自動化が進んだ.データ解析手法は現在,5つの研究グループで共有され,有効に利用されている.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
X線1分子追跡法の100μs/fといった高速測定がCMOSカメラや高速シャッタの導入によって恒常的に測定可能になったこと,また本手法で課題として挙げられていたデータ解析の効率化が進み,膜タンパク質(アセチルコリン受容体)の動態計測が可能になったため.データ解析手法は現在,5つの研究グループで共有され,有効に利用されている。
|
Strategy for Future Research Activity |
測定についてはこのまま推進すれば良いと考えているが,本手法で得られた知見に対する分子機構の考察を今後検討する必要がある.データ解析手法については,ある程度の自動化は進んだが,解析手法を習得するまでの労力は小さくない.より簡便に解析が行えるように整備したい.
|