2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体膜の膜融合ダイナミクス
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
23107709
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野口 博司 東京大学, 物性研究所, 准教授 (00514564)
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Keywords | ソフトマター物理 / 生物物理 / シミュレーション |
Research Abstract |
生体膜の融合、分裂は生命活動の多くの過程(細胞でのベシクルによる膜動輸送、シナプスでの神経伝達物質の放出、ウイルスの感染など)で起こる素過程であり、その融合経路を明らかにすることは生物物理学として非常に重要である。本研究では分子シミュレーションを用いて、膜融合を起こす条件とその融合経路とダイナミクスを研究する。 本年度は、本研究者がこれまでに開発した粗視化脂質分子模型を用いて、膜の曲げ弾性、単分子膜の自発曲率など、生体膜の性質に膜融合がどのように依存するかを研究した。最近、申請者が構築した新しい脂質分子模型を本研究に用いた。この模型では膜の曲げ弾性と単分子膜の自発曲率などを自由に変化さることができる。レーザーピンセットを模したコロイド粒子の挟み込みによる膜融合では、条件によって、中間体hemifusion diaphragmを経るか、もしくは中間体を経ずに融合する。そこで、この膜融合中間体hemifusion diaphragmに注目し、その安定性を詳しく調べた。hemifusion diaphragmには膜の分岐構造が見られるが、この分岐の形成に必要なフリーエネルギーをシミュレーションで見積もる手法を開発した。六方格子状に膜を張り、圧力テンソルの奥行き方向と多方向との値の差から線聴力として求めることができる。また、理論模型によってもフリーエネルギーを解析し、シミュレーションで得られた値と良い一致をすることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度にもかかわらず、膜融合における重要な中間体であるhemifusion diaphragmのフリーエネルギーの値の見積に成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、2成分の脂質からなるベシクルにおいて、相分離による膜の分裂について調べる。2相の境界線での張力と各相での膜端の張力の比によって、亀裂の起こる場所が変わることが予想される。これらの張力を調整することで分裂の経路を制御することができる可能性がある。 また、単成分膜において、膜の曲げ弾性、単分子膜の自発曲率などを膜の性質を幅広く変えるとともに、膜融合タンパク質模型を構築し、その融合機構を調べる。
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Research Products
(7 results)