2011 Fiscal Year Annual Research Report
中性子散乱法を用いた脂質膜非対称性の解消に関わる脂質-タンパク質相互作用の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
23107718
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
中野 実 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (70314226)
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Keywords | 中性子散乱 / リン脂質 / フリップフロップ / 蛍光 / ベシクル |
Research Abstract |
本研究では、種々の小胞体膜タンパク質の膜貫通部位によってリン脂質のフリップフロップが達成されているという作業仮説のもと、モデル膜と膜貫通ペプチドを用い、モデルペプチドの配列依存的なフリップフロップ誘起能を明らかにするために、時分割小角中性子散乱(SANS)法並びに蛍光法を用いて脂質のフリップフロップの計測を行った。 23残基からなる3種類の膜貫通モデルペプチド(TMP-L, -K, -E)を導入した1-palmitoyl-2-oleoylphosphatidylcholine (POPC)のベシクルを調製した。まず、ペプチド中央のトリプトファンの蛍光を利用し、ベシクルに水溶性、及び膜結合性の消光剤を添加して消光実験を行った。その結果、トリプトファン蛍光は膜中央に局在する消光剤によって選択的に消光されたことから、ペプチドのトリプトファンが膜内部に局在すること、すなわちペプチドが膜貫通配向をとることが明らかになった。次に、フリップフロップに対する3種類の膜貫通ヘリックスの効果をSANSにより調査した。ヘリックス非存在下、並びに膜貫通領域が完全に疎水性の配列(アラニン、ロイシン)をもつ膜貫通ペプチド(TMP-L)存在下ではPOPCのフリップフロップは観察されなかった。一方、膜貫通領域の中央に1残基だけ親水性アミノ酸(リジンまたはグルタミン酸)を入れたヘリックス(TMP-K, TMP-E)はフリップフロップを誘起することが明らかになった。さらにNBD標識脂質を用いたdithioniteアッセイによってもフリップフロップを評価したところ、NBD標識ホスファチジルコリンのフリップはTMP-Eによって最も促進されたが、NBD標識ホスファチジルグリセロールのフリップはTMP-Kによって最も促進された。つまり膜貫通ペプチド中央の親水性アミノ酸の種類によって脂質選択性が見られることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
繰り越して研究を行った結果、ほぼ計画通りの実験を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
3種のモデルペプチドを用いた実験から、フリップフロップに対する親水性アミノ酸残基の効果を明らかにすることができた。さらに様々なアミノ酸残基を導入して検討を行うことで、アミノ酸の種類や導入位置に依存したフリップフロップ誘起能を解明できると考えており、現在その検討を行っている。
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Research Products
(30 results)