2011 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白質毒性凝集体の特性を決定する構造揺らぎ
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
23107721
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
浜田 大三 神戸大学, 医学研究科, 特命助教 (60372132)
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Keywords | タンパク質 / フォールディング / ミスフォールディング / アミロイド / ダイナミクス / 自己組織化 / ストップトフロー / 分子認識 |
Research Abstract |
様々な疾患に関連する蛋白質毒性凝集体の形成機構と機能を分子科学的に明らかにすることが、本研究の最終目標である。これを明らかにするために、ここでは、潜在的に配列多様性を持つ抗体軽鎖の可変領域(V_L)の作る、アミロイド線維を始めとする毒性凝集体の形成反応における、状態間の転移反応に関与する「状態間揺らぎ」と各構造状態内での「状態内揺らぎ」の役割を熱力学的に解析を実施することで、各種の構造揺らぎがもたらす凝集速度・形態の制御機構を明らかにすることを試みている。 本年度は、当初の予定通り、「状態間揺らぎ」の凝集形成における役割を明らかにするため、ALアミロイドーシスの患者の尿より、ベンス・ジョーンズ蛋白質として単離された抗体軽鎖であるBREのV_L(BREV_L)と、アミロイド線維沈着を示さない多発性骨髄腫の患者から単離されたREI V_L、及び、両者の配列を部分的に入れ替えた、キメラ蛋白質の天然状態の熱力学的安定性、フォールディング・アンフォールディング速度に関する解析と、それぞれの蛋白質のアミロイド線維形成能に関する実験を行った。その結果、BRE V_Lの天然状態は、REI V_Lよりも不安定化していることが明らかになった。この不安定化は、フォールディング速度の低下と、アンフォールディング速度の上昇により、実現されていた。この結果は、天然状態の不安定化により、高いアミロイド線維形成能が獲得されることを示唆する結果であった。しかしながら、キメラ体による詳細な解析の結果、アミロイド凝集能は、必ずしも天然状態の安定性のみにより、支配されるのではなく、フォールディング・アンフォールディング速度の微妙なバランスにより、もたらされることが示唆された。現在、本結果について、論文を執筆中である。 また、本年度は、来年度に実施予定の、状態内揺らぎの解析に向けた、単量体型REI V_L変異体のNMR化学シフトの同定を行い、おおむね、主鎖シグナル帰属が完了した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、状態間揺らぎと、アミロイド形成能に関する相関性について、一連の解析が既に完了しつつあり、また、NMRによるシグナル同定も、予定通り進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、NMRを用いた状態内揺らぎの研究とパルス重水素交換法を用いた、フォールディング機構・中間状態の解析を実施し、これらの分子内揺らぎと蛋白質の凝集反応の関連性を詳細なレベルで解明する。また、過渡的に微量にしか蓄積しない中間状態の同定においては、本新学術領域研究班員の一人である立命館大学・北原亮先生との共同研究として、高圧NMRを用いた解析を実施する予定である。
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