2011 Fiscal Year Annual Research Report
天然変性タンパク質の過渡的構造形成の制御
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
23107724
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
楯 真一 広島大学, 理学研究科, 教授 (20216998)
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Keywords | 基本転写因子 / NMR / タンパク質構造 / 構造ダイナミックス |
Research Abstract |
酵母の基本転写因子TFIIEのβサブユニットのうちGal11と相互作用するフラグメント(TFIIEbフラグメント)が過渡的に形成する立体構造の特性の解明を目指して以下の研究を行った. 1) TFIIEbフラグメントが過渡的に形成する立体構造の特性の真空紫外CDによる解析: NMRによる立体構造解析では,TFIIEbフラグメントは過渡的に3つのα-helix構造を形成することが明らかになった.しかし,NOEに基づいた立体構造決定では3つのα-helixが同時に形成されるのか,それぞれの構造単位が全く同期せずに形成されるのかを区別することができない.タンパク質中に形成される二次構造の高感度計測を可能とする広島大学放射光施設にある真空紫外CDを用いて,過渡的に形成される立体構造中の二次構造含量を定量的に測定した.この結果,NMR構造の二次構造含量より少なく3つのhelix構造は同期して形成されるのではなく,ランダムに形成されることが分かった. 2) スピン緩和分散を用いた過渡的構造形成における構造ダイナミックスの解析: 過渡的に形成されるTFIIEbフラグメントのダイナミックスを解析するために,立体構造決定を行った35度とそれよりも低温の17度の状態でT2緩和分散測定を行い構造形成のダイナミックス解析を試みた.700MHzの分光器を用いた測定では,統計上有意な緩和分散曲線を示す残基は観測されず,T2緩和分散測定で計測可能な範囲での構造揺らぎの存在は確認できなかった。ミリ秒域での構造揺らぎを持つと判断されるため,次年度は更に遅い時間域での揺らぎを検出するための実験を計画する. 3) 異方性核スピン相互作用を用いた過渡的構造形成のダイナミックス解析: 異方性核スピン相互作用は,nsec-msecまでの広い時間域にわたるタンパク質構造のダイナミックスを検出できる.アクリルアミドゲルにより磁場配向させたTFIIEbフラグメントにたいして余双極子効果を用いたダイナミックス解析を試みたが十分な配向強度を得られずさらなる測定条件の検討を要する.次年度に測定解析を継続する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過渡的な構造形成についての性格付けについての実験は計画通り進んだが,予想していた動的構造特性とは異なった様相を示していることが明らかになった.このため,真空紫外CDを用いて温度変化による二次構造変化の系統的観測のための測定を行い構造形成ダイナミックスの詳細を検討するためのデータ集積を集中的に進めるなど当初の予定外の実験に時間を割いていたため.
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Strategy for Future Research Activity |
異方性核スピン相互作用から得られるタンパク質構造ダイナミックの情報が,構造形成ダイナミックスを議論する上での鍵となるが,タンパク質を磁場配向させるための条件の設定が上手く行かず今期は期待するデータを取得できなかったが,さらに強い磁場配向を実現する配向媒体の検討などを既に開始しており,早晩問題は解決できるはずである.X線小角散乱実験が大学内の施設を利用すること可能となったため,さらにX線小角散乱データも用いて構造形成ダイナミックスの解析を進める.
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Research Products
(18 results)