2011 Fiscal Year Annual Research Report
人工揺らぎ環境場における糖鎖プロセシング解析
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
23107727
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
戸谷 希一郎 成蹊大学, 理工学部, 准教授 (80360593)
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Keywords | 酵素 / 分子クラウディング / 微小空間 / 細胞外マトリクス / 揺らぎ |
Research Abstract |
生体内は多様な生命分子が織りなす不均一な環境であり、酵素反応場は常に揺らぎの中に存在しているものと考えられる。また酵素自体の3次元構造も周辺環境の揺らぎに伴って動的に変化している可能性もある。本研究は酵素反応が生体内反応場に由来する揺らぎによって受ける影響を明らかにし、揺らぎを加味した生命分子のプロセシング機能解析を目的としている。そこで試験管内に「高濃度環境」「微小空間」「網目空間」という3つの特異な生体内揺らぎ環境を再現し、その中で生命分子のモデルとして糖鎖プロセシング解析を行う。 本年度は、標的生命システムである糖タンパク質品質管理機構が稼働している小胞体画分を、ラット肝臓より遠心分画法で抽出・精製し、人工揺らぎ環境場(分子クラウディング環境、リボソーム環境、網目環境)内に活性を保ったまま封入することに成功した。一方、糖タンパク質品質管理に係る糖鎖プロセシングの基質となる高マンノース型糖鎖プローブの合成研究を行い、数十グラムオーダーで合成可能な新ルートによる合成をほぼ完了した。また標的生命システムの評価には酵素反応解析とタンパク質相互作用解析が必要となるため、すでに確立している揺らぎ環境場における酵素アッセイ法に加え、「分子クラウディング環境」、「リポソーム環境」、「網目環境」においてサーマルシフトアッセイ法を用いた相互作用解析法を確立した。さらに分子クラウディング環境場で糖タンパク質品質管理に係る糖鎖プロセシングを再現し、多様な糖鎖プロセシング酵素とレクチンが関与する生命システムに対する揺らぎの影響を検証したところ、プロセシング前半のグルコース切断反応は加速し、後半のマンノース切断反応は減速することを見出した。加えてプロセシング中間体とレクチン様分子シャペロンカルレティキュリンの相互作用解析を行ったところ、分子クラウディング環境においてその結合力が増大することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画で掲げた「生体試料からの小胞体画分の抽出と揺らぎ環境場への封入」、「小胞体型糖鎖基質の合成」、「人工揺らぎ環境場における相互作用解析法の確立」、「糖タンパク質品質管理機構における揺らぎの検証」のいずれの課題に対しても目標を概ね達成できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り「揺らぎ環境場を組み合わせた複雑反応場における糖タンパク質品質管理機構の検証」および「揺らぎ効果の抽出と分子レベル解析」について研究を遂行する。
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