2011 Fiscal Year Annual Research Report
アポトーシス誘導による疾患治療と細胞膜の揺らぎ
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
23107731
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Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
松本 陽子 崇城大学, 生物生命学部, 教授 (00133562)
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Keywords | リウマチ / リポソーム(複合脂質膜) / 細胞膜 / 揺らぎ / アポトーシス |
Research Abstract |
生体分子の揺らぎと機能は密接であり、生体膜およびタンパク質の揺らぎは生命現象の本質を解明する上で極めて重要な課題となっている。上岡らは脂質分子とミセル分子から成るハイブリッドリポソーム(HL)が、抗がん剤を含まず、がん治療・エイズ治療が可能なことを見出している。がんやエイズ同様に難治性疾患であるリウマチやアルツハイマー病にも細胞膜の揺らぎが関与している可能性がある。 本研究では、異常増殖する患者由来のリウマチ(滑膜)細胞(HFLS-RA)に対するハイブリッドリポソーム(HL)の増殖抑制効果およびリウマチモデルマウスに対するHL-23の治療効果を検討した。(1)in vitroにおけるHFLS-RA細胞に対する増殖抑制試験から、HLの顕著な増殖抑制効果が明らかになった。(2)フローサイトおよびTUNEL法での解析により、HLがHFLS-RA細胞に対し、アポトーシス誘導により増殖抑制効果を示す可能性を明らかにした。(3)関節炎自然発症モデルであるSKGマウスに対するHLの治療実験において、未治療群では、手指関節の腫れと関節の変形がみられたが、HL治療群においては関節の炎症は見られず、リウマチに特徴的な手指の腫れや関節の変形を抑制する基礎的知見が得られた。今後、HLによるリウマチ細胞に対するアポトーシス誘導と細胞膜の流動性との関連性の解明が重要となる(Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters,21(1),207-210(2011))
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HLの流動性(揺らぎ)とHLの抗腫瘍効果に相関性があることが明らかになっている。がんだけでなく、リウマチのような炎症性疾患に対してHLの抗炎症効果が密接に関連することが明らかになってきている。領域内の有機的なつながりによる医学部との活発な研究討議により、抗炎症効果に関する研究がおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
HLの流動性(揺らぎ)および炎症性疾患細胞膜の流動性(揺らぎ)と、HLの抗炎症効果に関する多くの事例を増やし、一般則として確立する予定である。詳細なメカニズムについては、疾患細胞およびHLの流動性を、様々な分析法により明らかにする事が可能である 疾患細胞膜に人工膜であるHLが特異的に融合するプロセスなどの計算科学的手法などを用いた物理化学的解明を進める。
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