2011 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白質の揺らぎとアミロイドの構造の関係
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
23107734
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
大橋 祐美子 独立行政法人理化学研究所, タンパク質構造疾患研究チーム, 研究員 (10422669)
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Keywords | アミロイド / 揺らぎ / 構造多形 / 核磁気共鳴法 / Sup35 |
Research Abstract |
プリオン病及び蛋白質アミロイド化関連疾患において、アミロイドの構造は感染性や病態を決定する重要なファクターであることが示唆されている。しかしそのアミロイド多形形成のメカニズムは明らかではない。本研究では、酵母プリオンSup35をモデル蛋白質として用い、アミロイド多形形成のメカニズム解明に向け、アミロイド前駆蛋白質の揺らぎや部分構造に着目した核磁気共鳴法での解析を行った。タンパク質主鎖のアミド水素と溶媒の水素との交換速度が分かるCLEANEX-PM測定では、アミロイドのコアとなりうる領域内に比較的速い交換速度を示す2つの領域が見つかった。その領域は、アミロイド線維に共通する構造であるクロスβ構造の形成に有利なアスパラギン残基が多く集まっており、アミロイド形成起点となっていることが考えられた。そこで、その領域の一方の二箇所のアスパラギン残基をアラニンに置換したところ、アミロイドコアが完全にもう一方の起点側に移動することが確認でき、アラニン置換によりアミロイド形成起点が破壊されたことを意味するものと考えられる。また、飽和移動差NMR測定から、アミロイド形成起点領域がアミロイド形成前にも分子間相互作用していることがわかった。この結果から、分子内にアミロイド形成起点が複数存在し、環境や分子の状態により、どれか一つの開始点が選択されることがアミロイド多形を作り出すメカニズムの1つであることを掴んだ。 生体内にはアスパラギンを多く含む領域を持つタンパク質が多数存在し、その一部は凝集関連疾患との関わりが指摘されている。本研究の結果は多くのそれらのタンパク質に共通するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アミロイド形成起点領域の発見により、大きく進展し始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
Sup35のNMドメインは天然変性領域として知られているが、これまでの測定の結果から、部分構造の存在が示唆されている。揺らぎを抑制する部分構造はアミロイド構造の決定に多大な影響を持っている可能性が高いため、常磁性体ラベルSup35を用い、核磁気共鳴法でその部分構造を明確にする。 また、同じ領域にコアを持つアミロイドでも異なるコンフォメーションを持つものがあることがこれまでの実験から分かっている。これらには残基の性質が大きく関わっている。様々なアミノ酸変異体から作成したアミロイドの性質を探ることで、アミロイドコア構造モデルを作りたいと考えている。
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