2011 Fiscal Year Annual Research Report
原核生物多剤耐性トランスポーターの構造揺らぎと薬剤排出活性のNMR解析
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science of Fluctuations toward Biological Functions |
Project/Area Number |
23107735
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
竹内 恒 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディシナル情報研究センター, 研究員 (20581284)
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Keywords | 核磁気共鳴 / 構造生物学 / 多剤耐性 |
Research Abstract |
低分子トランスポーター(Smr)は細胞膜により自らを外界より隔離した細胞が必要物質の取り込みあるいは不要物の排出を行うのに不可欠な分子機構である。トランスポーターは、様々な制御を受けて機能するが、分子の熱力学的な"揺らぎ"を輸送に利用する点で共通している。すなわちトランスポーターの機能解明には動的観点からの立体構造解析が不可欠となる。核磁気共鳴(NMR)法は溶液中の蛋白質の原子レベルにおける構造情報を抽出できる唯一の構造生物学的手法である。申請者はSmrをNMR法により解析することで、「機能に直結する運動性の分子内分布」「動的構造の制御部位の所在」および「基質の動的認識機構」を明らかにすることを目的とする。このことにより"揺らぎ"を機能に変換する分子機構の解明に貢献できると考えている。本年度は構築、発現を確認した多剤耐性トランスポーターemrEの大腸菌発現系に関し、発現条件の最適化、精製および再構成条件を検討した。M9最小培地による発現検討の結果、低温(20℃)overnight、低IPTG濃度(0.6 mM)での誘導時に最も顕著な発現が見られることが判明した。また同様の機能を持つ異なる種由来のSmrについても発現検討を行い(真菌から4種、高度高熱菌から3種)、ブドウ状球菌のsmr(SAsmr)および高度高熱菌のsmr(TTsmr)が良好な発現を示した。可溶化条件を検討したところ、emrE、SAsmrはドデシルマルトシド可溶化により見かけ分子量で100kDa付近に溶出した。一方TTsmrは200kDa以上の見かけ分子量を示し、当該条件では多量体化が顕著であることがわかった。また多剤耐性活性に必要な、複数の化合物の同一タンパク質による認識機構を明らかにする目的で、様々な薬物を認識し、トランスポーターの発現を促進する多剤耐性転写因子の構造解析にも着手し、シグナルの帰属、基質結合の再現などに成功している。これは本研究の目的の一つである基質の動的認識機構の解明に資するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
膜タンパク質の多くは大腸菌における極めて発現が難しく、そのことが膜タンパク質研究の進展を困難にする原因となっている。今回多種のsmrの発現検討を行った結果、5種のsmrにおいて良好な発現量が観察されており、今後の展開に期待がもたれる。また様々な薬物を認識し、トランスポーターの発現を促進する多剤耐性転写因子の構造解析にも着手し、シグナルの帰属、基質結合の再現などに成功しており、基質の動的認識機構の解明に向けた一定の成果を挙げている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は界面活性剤の混合、リン脂質の利用などを検討することでsmrの可溶化条件を速やかに確立し、構造解析に移行したい。同時に基質結合などを指標に活性の確認を行うことで、得られたsmrが可溶化後も活性を保持していることを確認する。同時に多剤耐性転写因子の構造解析を進めることで、本研究の目的の一つである基質の動的認識機構の解明につなげていきたい。
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Research Products
(10 results)