2011 Fiscal Year Annual Research Report
放線菌プラスミド上の特異二次代謝生合成系の解析および人為制御による有用分子生産
Publicly Offered Research
Project Area | Biosynthetic machinery: Deciphering and regulating the system for bioactive metabolite diversification |
Project/Area Number |
23108515
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
荒川 賢治 広島大学, 大学院・先端物質科学研究科, 准教授 (80346527)
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Keywords | 放線菌 / ポリケチド / チオエステラーゼ / 生合成 / 抗生物質 / ブテノライド / シグナル分子 |
Research Abstract |
放線菌Streptomyces rochei7434AN4株は2つのポリケチド抗生物質ランカサイジン(LC)・ランカマイシン(LM)を生産する。また微生物ホルモンSRBを鍵物質としたLC・LM生産制御カスケードの存在も示唆された。本年度は(1)LM生合成におけるタイプ2型チオエステラーゼ遺伝子lkmEの機能解析,(2)SRBの単離・構造決定,に焦点を絞り研究を実施した。 (1)lkmE遺伝子破壊株を構築して代謝産物を調べたところ、親株と比較してLMの生産量は70%減少しており、さらに新規化合物の生成が認められた。新規化合物の化学構造をNMR,MSなどの分光機器で精密解析したところ、いずれも15-norランカマイシン誘導体であることが分かった。[3-^2H]3-methyl-2-oxobutyrateの取り込み実験を行い、15-norランカマイシン誘導体のスターター起源はバリンであることが明らかになった。さらに13位分岐側鎖の1-カルボキシエチル基の立体化学も、キラル重水素標識イソ酪酸の取り込み実験により明らかに出来た。以上によりLkmEは、LM生合成において誤って導入されたスターターユニットを加水分解して除去する役割をもつことが示唆された。 (2)SRBの単離・構造決定を行うため、200リットルスケールで培養し、各種クロマトグラフィーで精製した。高分解能質量分析により2つの活性成分の存在が示唆された。それらの構造をNMRで解析したところ、いずれもγ-butenolide骨格を有する新規シグナル分子であった。今まで知られている放線菌微生物ホルモンはγ-butyrolactone骨格であり、本成果によりシグナル分子の構造多様性を見出すことが出来た。さらに単離した化合物SRB1,SRB2を化学合成し、その構造を確認するとともに抗生物質生産誘導活性を調べた。その結果、天然型は20-50nMという低濃度でもLC,LM生産誘導活性を有しており、アルキル鎖の1'位水酸基の立体化学が生物活性に重要であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
9.に記載した項目(1)については学術雑誌に掲載され、ポリケチド生合成初発反応の巧妙な調節機構を明らかに出来た。(2)については、近年新規骨格のシグナル分子が他のStreptomyces属放線菌からも報告されており、放線菌二次代謝産物の人為制御による有用分子生産へと展開するに当たり、有用な知見であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本公募研究の最終年度に当たるため、今まで解析してきたP450水酸化酵素や糖転移酵素、PQQ要求性デヒドロゲナーゼの基質特異性に着目し、二次代謝酵素による新規骨格分子の構築を目指す。また、本年度構造決定を完了したシグナル分子SRBの生合成起源について興味が持たれたので、取り込み実験や遺伝子破壊実験を駆使してさらなる解析を進めていく所存である。
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Research Products
(13 results)