2011 Fiscal Year Annual Research Report
精密有機合成に基づく縮環炭素π電子系の機能発現の研究
Publicly Offered Research
Project Area | Emergence of highly elaborated pai-space and its function |
Project/Area Number |
23108704
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻 勇人 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (20346050)
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Keywords | 有機合成 / π共役系 / 有機機能性材料 / 光物性 / 電子物性 |
Research Abstract |
ラダー型π共役系骨格をもつ炭素架橋フェニレンビニレン化合物(COPV)について,繰り返しユニットが1から6までのもの(COPV1~COPV6)を合成した.COPV4のX線結晶構造解析にも成功しており,その剛直な平面構造を確認した.光物性測定により,ユニット数が増えると吸収波長が長波長シフトするという共役長と光物性の関係についての知見を得るとともに,ユニット数にかかわらず蛍光量子収率がほぼ1と,対応する非架橋体とは異なる特異な物性を示すことなども見出した.また,COPV2の末端にジシアノメチリデンを導入することで,安定なキノイド化合物を得ることに成功した.この化合物は,1,200nm近赤外領域にも及ぶ長波長光を吸収する材料の開発に成功した.このほか,ラダー型化合物の応用も検討した.炭素架橋meta-ジビニルベンゼン構造をもつs-インダセンにホスフィンオキシドを導入した化合物を合成し,この化合物がバッファ材料として有機太陽電池の効率を向上することも見出した. また,ジベンゾクリセン(DBC)の研究については,様々な置換基を持つ誘導体を合成し,結晶構造解析と物性測定を行った.その結果,DBCはねじれた骨格を有し,このねじれにより分子同士がスタックしたパッキング構造をとることが明らかとなった.ねじれ角や分子間距離は置換基の種類に依存することも見出している.さらに,飛行時間法(TOF)を用いてDBCの非晶質膜のキャリア移動測定を行ったところ,正孔も電子も輸送する両極性を示すことも明らかとなった.このように新しい炭素π電子系に関する様々な知見を得ることに成功するとともに,高性能機能性材料の開発につながる新しい知見を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた長波長吸収材料の開発や,構造-物性相関についての知見の集積は予定通りに進展している.研究を行う中で,有機太陽電池の高効率化に資する材料を見出すなど,当初予定していなかった方向での大きな進展もあった.また,ジベンゾクリセンに関する計画については,誘導体を多数合成し,物性制御も予定通り進捗している.加えて,独自のねじれた構造や,移動度測定から高移動度バイポーラ性という新しい知見も見出し,材料の新しい可能性も見出している.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から,炭素架橋フェニレンビニレン(COPV)の合成と,構造解析から剛直な平面構造であることを見出している.このような剛直平面構造をもつ化合物の例は少なく,π電子系の本質についての知見が得られると期待される.そこで,今後はCOPVのキャリア輸送特性の研究について注力したい.具体的には,分子ワイヤーとしての応用を通じて,輸送効率の研究や輸送メカニズムについての研究を行いたいと考えている.また,DBCはねじれたπ電子系という特異な構造をもつことを見出した.この構造を利用して,非平面構造π電子系の化学も展開したいと考えている.まずは,DBCをコアとする高移動度材料の開発へと展開する.
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