2011 Fiscal Year Annual Research Report
リン原子を骨格構成元素とするフタロシアニン類の合成とその性質
Publicly Offered Research
Project Area | Emergence of highly elaborated pai-space and its function |
Project/Area Number |
23108707
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水畑 吉行 京都大学, 化学研究所, 助教 (30437264)
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Keywords | 有機元素化学 / 典型元素 / リン / フタロシアニン / π拡張分子 |
Research Abstract |
高周期元素不飽和結合は、その小さなHOMO-LUMOギャップに起因して光学的・電気的に興味深い性質が見られ、物性・機能化学的要素を主眼として新たに展開することが国内外で強く切望されている。本研究課題では、その中で第三周期15族元素であるリンを含む不飽和結合に着目し、それを高次環状共役系であるフタロシアニンに組み込むこと(窒素→リン置換)を目的としている。リン原子に置換することで、HOMO-LUMOギャップは顕著に減少し、新たな物性を発現することが期待できるばかりでなく、リン-炭素結合長は窒素-炭素結合長に比べて顕著に伸長するため、中心配位場(空隙)のサイズ変化が起こると考えられる。それに伴い、母体フタロシアニンとは異なる配位能などが期待できる。平成23年度は、母体のフタロシアニン合成に用いられている手法であるフタロニトリル法をリン類縁体へ展開し、フタロシアニンのメゾ位をリン原子に置換したテトラホスファフタロシアニンの合成を検討した。まずその中間体となるフタロニトリルの一つのニトリルをホスファアルキンとした化合物の合成を検討したが、反応の制御が困難であり、現在までのところ生成物の帰属・同定には至っていない。この要因の一つとして立体保護効果の不十分さが考えられるため、現在さらに置換基を導入した骨格合成を検討している。また導入するリン原子数を少なくした骨格の逐次合成に対しても検討を行い、中途ではあるが計画通りに進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
母体フタロシアニンの合成法を踏襲することによるリン類縁体の合成を検討しているが、その中間体となるリン類縁体の安定性の問題から生成物の完全な構造決定に至っていない。現在、立体保護の観点も含め新たに骨格の設計・構築を検討しており、それによって中間体および目的化合物の合成・単離を達成したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、フタロシアニンのメゾ位をリン原子に置換したテトラホスファフタロシアニンの合成を目的に検討を行う。まず、フタロニトリルのニトリルを一つ、ホスファアルキンとした化合物を経由する方法を検討する。ホスファアルキン部位は反応活性であるため、ベンゼン環上にかさ高い置換基を導入しその安定化を図る。得られたフタロニトリルのリン類縁体に対し、遷移金属錯体存在下、各種還元剤を用いた環化・縮合反応によってテトラホスファフタロシアニンを合成する。テトラホスファフタロシアニンの合成を達成した際には、性質・物性を実験化学・理論化学の両面から詳細に解明する。実験的にはX線結晶構造解析および各種スペクトル測定(NMR、IR、Raman、電子スペクトル等)を用いて基礎化学的知見を蓄積する。特にその酸化・還元挙動に関して詳細に検証を行う予定である。
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